バックスイングでは顔の向きを固定して体を回すことは難しい
多くのゴルファーが持つトップオブスイングのイメージは、両肩のラインがアドレス時から90度ほど回っている状態でないだろうか。実際にツアー選手のトップオブスイングを見ると、フルショットでは多くの選手において肩のラインが90度以上回っている。
解剖学的に胸腰部の可動域は右回旋、左回旋ともに40度で、股関節は右左ともに45度。つまり、体幹部だけで両肩のラインはアドレス位置から最大85度回すことが可能だ。ただし、体幹の側屈(肩の縦回転要素)が加わると、90度を超えることもある。
体の柔軟性は人によって違うが、持っている可動域を十分に活かしたバックスイングをすべきだろう。
スイング中に顔の向き(首)を固定しているゴルファーは多い。だが、顔の向きを固定すると、胸腰部の回旋に制限をかけてしまう場合がある。他にも、深いトップオブスイングを作ろうとして脊柱を不自然に曲げ、体を回してしまうことも考えられる。
胸腰部の回旋に合わせて顔の向きも適度に変えた方が可動域を活かせ、脊柱のアライメントも崩さずスムーズに体を回すことが可能だ。
体と一緒に首も回す
顔の向きの固定を開放するように首を回せば、肩のラインの回転が易しくなる。胸腰部と股関節の回旋を邪魔する(制限をかける)ものがなくなるからだ。
バックスイングで顔の向きが変わるということは、視界が変わることになる。固めていた顔の向きを解放し、視界が変わると、バランスが崩れているような感覚になるかもしれない。しかし、感じているよりもバランスは保っているもの。崩れたとしても、それは顔の向きが変わることが問題なのではなく、体の使い方に問題がある。
東京五輪の男子日本代表、星野陸也
東京オリンピックに出場する星野陸也は今季(2020-2021)、日本ツアーで12戦3勝と高い勝率を挙げ、逆転で日本代表入りを果たした。身長186センチ、体重76キロの恵まれた体格を活かしたドライバーショットによる飛距離が持ち味だが、アイアンショットの精度も世界基準に近づいてきている。
6月17日~20日に開催された全米オープンでは26位に入った。4日間通した※SG:アプローチ・ザ・グリーンは、優勝したジョン・ラームや松山英樹を抑え、世界ランク4位のコリン・モリカワに次ぐ2位だった。
星野のスイングは、バックスイングで首を右に回している。頸椎や胸椎のアライメントを崩さずにバックスイングしやすい点を活かし、再現性高いショットを打つことができているようだ。
※グリーンを狙うショットで稼いだ打数
ボールに対する意識を弱める
インパクト時の「ヘッドアップ」を気にしているゴルファーはとても多い。それも影響してか、多くのゴルファーはスイング中ボールを凝視して顔の向きを固定している。
ボールに対する意識が強いほど、胸腰部や股関節の可動域を活かしにくくなる。体に余計な制限をかけないためには、ボールに対する意識を弱めたい。
自分のスイングを省みても、他の人のスイングを見ても、「素振りは良い」と感じたことがあるゴルファーは少なくないのではないのだろうか。実際にボールを打つ時のスイングと、素振りの時のスイングの違いは、ボールに対する意識の有無によるものが大きい。
無理に顔をボールに向け続けようとせずに、体の各部位本来の可動域に合ったイメージを持ってスイングを作っていきたい。
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