多くのゴルファーはオーバースイング
人によって体の可動域が違うため定義づけるのは難しいのだが、バックスイング時にオーバースイング(クラブを大きく振り上げ過ぎる)するゴルファーは多い。
オーバースイングには、体の運動量に対して腕の運動量が多過ぎる(肘と手首の曲げ過ぎも含む)「オーバースイング」と、体を回し過ぎる「オーバーターン」がある。いずれも無理にヘッドスピードを上げると起こりやすい。飛距離を意識するあまり、ついついクラブヘッドの運動量や体の回転量を大きくしてしまうのだ。
オーバースイングはスイングバランスを崩しやすい。そうなるとインパクトは不安定になり、飛距離と方向を両立させることが難しくなる。一方、スイングバランスが崩れにくいコンパクトトップ(イメージ)は、インパクトが安定しやすい。
自身初のメジャー制覇 スペイン人初の全米オープン制覇となったジョン・ラームのスイング
6月17日~21日に開催された全米オープンで、初めてメジャーを制覇したジョン・ラーム。現在は米ツアー賞金ランキングと世界ランキングで1位、※1)SG:オフザティー、※2)SG:アプローチザグリーン、※3)SG:ティートゥグリーンで上位に入っている。
ジョン・ラームのスイングはかなりコンパクトだ。胸よりも少しだけ上あたりがトップ(手)の位置なので、正面から見ると左腕が横を向いている。だが、ツアー選手の多くは頭ぐらいまで手が上がり、正面から見ると左腕はほぼ真上を向いている。
ほとんどの一般ゴルファーがイメージするのも「ツアー選手の形」だろう。しかし、このイメージでスイングすると、バックスイングの遠心力により思った以上にトップの位置が大きくなってしまい、オーバースイングしやすくなる。
そんなゴルファーはジョン・ラームのトップの形をイメージするべきだ。「トップの位置は手が胸の高さあたり」と意識してスイングすれば、元々イメージしていたトップの形(大きさ)に近づくはずだ。
※1)ティーショットで稼いだスコア
※2)グリーンを狙うショットで稼いだスコア
※3)ティーショットからグリーンに乗るまでに稼いだスコア
コンパクトトップの飛距離
インパクトを安定させやすいコンパクトトップではあるが、飛距離減が懸念される。通常、クラブヘッドの移動距離が短くなれば、ヘッドスピードも減速すると考えられているからだ。
しかし実のところ、スイングバランスが良くなることでヘッドも十分に加速させられるため、思っているほどヘッドスピードは落ちない。仮にヘッドスピードが落ちたとしても「ヘッドスピード=飛距離」ではないので、フェースでボールをしっかりとらえることさえできれば飛距離は出る。
オーバースイングに比べてコンパクトトップならボールをとらえやすい。トップの位置は、少し余裕がある程度の高さがよいだろう。この高さでは飛距離が出ないように思うかもしれないが、意外とそうならないものだ。
コンパクトトップの注意点
アドレスの状態のまま、体を止めてクラブを手でヒョイと上げてトップの位置をコンパクトにしても、コンパクトトップのメリットは活かしにくい。オーバースイング同様、手が体と連動しなければ、ダウンスイングからインパクトにかけて手や腕でアジャストする動作を無理に入れざるをえないからだ。手や腕の過剰なアジャストは、インパクトの再現性を損ないやすい。
コンパクトにする場合、体が回転、あるいは捻転した時に、手が体の正面から外れず収まっている状態が理想だ。タイミングの取り方が変わることもあるので慣れが必要だが、効率的に精度を上げたいなら、トップの位置のコンパクト化を検討してみてはどうだろうか。
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