時松隆光と清水大成の共通点
5月6日から9日に開催された西那須野カントリークラブで開催されたジャパンプレーヤーズチャンピオンシップは大混戦となった。3日目終了時点で首位と3打差以内に8人。その中にいたのがツアー通算3勝の時松隆光と清水大成だ。
二人の共通点は珍しいベースボールグリップ。その名の通り、野球のバットを握るように10本の指全部で握るグリップだ。多くの選手は、右手の小指を左手の指に重ねる「オーバーラッピンググリップ」や、右手小指を左手人差し指にからませる「インターロッキンググリップ」を採用している。いずれも左手親指は右手の平に包まれる形となる。
一般的に認知されている、10本の指全部で握る「テンフィンガーグリップ(左手親指は右手の中)」を採用している選手ですら多くない。左手親指を右手の外に出すベースボールグリップを採用している選手はきわめて珍しい。
桜美式
ともに出身が福岡の時松と清水の師匠は同じ篠塚武久。この篠塚氏が提唱する「桜美式」の土台にあるのがベースボールグリップだ。
篠塚氏の著書『10本で握る テンフィンガーグリップ(ゴルフダイジェスト社)』には、「両手の親指を伸ばしてシャフトに乗せてはいけない」「トップの位置で親指でクラブを支えようとし不安定の原因となる」と書かれている。
※篠塚武久(シノヅカタケヒサ)
福岡市のゴルフ道場「桜美ゴルフハウス」を主宰。福岡大学の大石迪夫(オオイシミチオ)教授と共同で作り上げ‟桜美式”「OSゴルフ理論」提唱者。
多くのゴルファーが親指に力を入れすぎ
篠塚氏が書籍の中でも述べているように、親指に力が入り過ぎないというのが大きなポイントだ。
多くのゴルファーは親指に力が入りすぎる傾向にある。親指が最も力を入れやすく、クラブの重みや遠心力を受け止めやすいからだ。しかし、それは、一般的に言われている「力み」につながり、クラブの重力、遠心力などといった物理的な力を損なうスイングにつながってしまう恐れがある。
手の中では、グリップ(クラブ)は適度に‟あそび”があるべき。手の中でグリップがムニュムニュ動く感じが少しはあるべきなのだ。それがあることで、腕とクラブが連動しやすくなる。
そして、その‟あそび”を受け入れられない場合に、親指に余計な力が入りやすくなる。その状態で練習を重ねた場合、腕とクラブが連動しにくくなるだけでなく、篠塚氏が書籍の中でも述べているように、親指の怪我につながるリスクも生じる。
ベースボールグリップはその‟あそび”を受け入れやすく、怪我のリスクを軽減することが期待できるグリップなのだ。
親指に頼らないことで物理的な力を使いやすくなる
一般的に言われている「クラブの重みを感じる」という感覚がつかめないゴルファーもベースボールグリップで練習してみると、その感覚を得られるかもしれない。実際に採用しなくても、練習ドリルとして試してみると良いだろう。
「インターロッキング」や「オーバーラッピング」の形で、ベースボールグリップの要素を入れた練習ドリルを紹介する。親指に余計な力を入れずにクラブの重みを感じるための練習ドリルだ。
【その①】
普通にグリップする
↓
右手親指をグリップから離す
↓
離したままスイング
【その②】
普通にグリップする
↓
左手親指を右手の中から出す
↓
出したままスイング
これを素振りで実践してみたゴルファーの多くは、「打てる気がしない」と言うだろう。しかし、実際にボールを置いてスイングをすると案外当たる。その時のスイング映像を見ると、腕とクラブが連動しキレイなスイングになっていたりする。是非試してみて欲しい。
ベースボールグリップの注意点
親指の負担を減らして、クラブの重みを生かしやすいベースボールグリップではあるが、その優位性を生かすためには腕の力みを抑える必要がある。腕の力みが過剰になると、しなやかな腕とクラブの連動は難しくなる。
指で握る「オーバーラッピング」や「インターロッキング」に比べて、ベースボールグリップは手のひら全体でわしづかむようにして握ることなり、扱い方によっては腕の力みになりかねない。また、親指を使わないことによる、スイング中クラブを支えきれていない不安感を打ち消そうとしてしまうと、腕の力みが生じやすくなってしまう。
時松や清水は腕力が無いジュニア期から桜美式(ベースボールグリップ)でゴルフをしていた。よって、‟腕力がクラブの重力や遠心力に負ける”状態で、練習に励んだため、ベースボールグリップの優位性を生かし、しなやかな腕とクラブの連動を習得できたのだろう。
成人は、腕力がクラブの重力や遠心力に勝ててしまうため注意が必要だ。この点がクリアできればベースボールグリップへの変更は‟あり”かもしれない。
時松は、5月13日~16日開催のアジアパシフィックダイヤモンドカップゴルフでも3日目終了時点で2位タイと、優勝争いに加わった。引き続きベースボールグリップと、それを採用している選手に注目したい。
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