今年初の優勝争い
5月6日~9日に西那須野カントリークラブで開催されたジャパンプレーヤーズチャンピオンシップで優勝争いを繰り広げた石川遼。
3日目終了時点では4位タイ、最終日前半も4アンダーで一時は首位に立ったものの、結果は上がり3ホールがボギー、パー、ダブルボギーで7位タイに終わった。
石川は2013年から米ツアーを主戦場としていたが、2017年秋からは日本ツアーに移行。現在は米ツアーへの復帰を目指している。そんな石川に、今季(2020年と2021年統合)明るい兆候が見えてきている。
ドライバーショットの精度向上
石川のドライバーショットは元々「飛ぶけど曲がる」。「ハニカミ王子」としてブレークした10代の頃には「350ヤードまっすぐ飛ぶドライバーショット」「1日最低バーディ4個」という目標を掲げていた。そのような、超攻撃型のゴルフを信条としていたことが影響したのだろう、米ツアーフル参戦前4年のフェアウェイキープ率は50%を超えなかった。
しかし近年、フェアウェイキープ率が上昇している。2019年は50%を超えており、今季はさらに上昇傾向だ。
ちなみに、今季のドライビングディスタンスとフェアウェイキープ率を合算したトータルドライビングは、現時点で8位タイ。このままいけば、過去最上位となる(これまでの最上位は2008年の13位タイ)。今季はこれまでで最もドライバーショットが「飛んで曲がらない」状態のようだ。
昨年初めてコーチと契約してスイング改造
石川のスイングはバックスイングがフラット(横軌道)になり、トップオブスイングがコンパクトになった。現状のスイングに対して、石川自身「自分にとって今までで一番いいスイングになっているのは間違いなくて、感覚的にもかなりいいです」と述べている。
こういう状態になれたのは、昨年初めてコーチと契約したことが大きい。そのコーチとはACT(アスリートコンサルティングチーム)を率いている田中剛(タナカゴウ)氏。様々なデータを集めて分析し、それを選手個々のデータと照らし合わせながら選手をサポートする活動をしているコーチだ。
石川は田中コーチのことを「自分の疑問や自分に足りていないと思っていることを、データや客観的な情報、数字で指摘してくれます」と評している。
田中コーチの指導の効果もあり、フラットでコンパクトな「今までで一番いい」という自己評価のスイングになった。それが、フェアウェイキープ率やトータルドライビングにも表れ始めていると見てよいだろう。
まずは日本ツアーで強さを発揮
石川はコーチと契約する前も、自分自身の考えによりあらゆるスイング改造を行ってきた。それらの経験と、昨年からの田中コーチの指導が融合して、状態が上向いているようだ。
ジャパンプレーヤーズチャンピオンシップの最終日の最終ホールは、ティーショットを左に曲げて池に入れ、ダブルボギーとした。いま手ごたえを感じているところを、より無意識にできるように定着させることができると、こういうショットが減り、勝ち切ることができるのではないだろうか。
公言している目標の「米ツアー復帰」を達成するためには、まずは日本ツアーで強さを発揮する必要がある。石川も9月17日で30歳だ。「感覚」だけでなく「客観性」にも重きを置き、成熟したゴルフを構築している、残りの20代の戦いに注目したい。
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