マスターズ優勝
4月8日から11日に開催されたマスターズ・トーナメントで松山英樹が優勝した。2017年の全米プロ(メジャー)では、最終日に一時首位に立ちながら、その後崩れて5位。この時、悔し涙を流した松山だったが、4年後のマスターズの最終日の最後のパットの後に見せたのは嬉し涙となった。
松山は2017年のWGCブリヂストン招待を最後に優勝から遠ざかっていたが、米ツアーでシーズンを通して活躍した30人だけが出場できる最終戦のツアー選手権に7年連続出場しているなど、世界トップレベルを維持していた。
「メジャーに勝てる力はあるけれども勝てない」そんな状況を打破できた一因としてスイングの変化とパッティングストロークの変化が挙げられる。
スイングに変化
バックスイングではフラットなスイング軌道を描くようになり、トップオブスイングがコンパクトになった。
松山は今年から目澤秀憲コーチと契約した。スイング軌道やトップオブスイングの位置の変化は目澤コーチの指導あってのものだと思われるが、最初からこの形を目指して作りこまれたわけではないようだ。
元々、松山はクラブの動きを自分で支配するようにコントロールして、ドローやフェードを打ち分けていた。それが一因となり、トップの位置で止まっているように見えることがあった。ゴルフ専門誌ALBA793号掲載のインタビューでは「左肩の残し具合でドローとフェードを打ち分けていたら、トップで止まるようになった」と述べていた。
理想を追及することがスイングのかたさにつながっていた松山。クラブの動きを自分で支配しようとせず、より「クラブの重みや慣性を生かす」ように目澤コーチが導いた結果、強いプレッシャーがかかっても崩れにくいシンプルなクラブの動きを生んだのだろう。
パッティングストロークも変化
松山はもともとパッティングに難があった。アイアンショットの近年の安定感は世界一と言っても過言ではない。それにもかかわらず、スコアを伸ばせるはずなのに伸びないラウンドがいくつもあったのは、パッティングに足を引っ張られていたためだ。
それは数字にも表れている。米ツアーのSGP(ストローク・ゲインド・パッティング)は毎年下位。今年もマスターズ前の時点で166位だった。
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今もまだ安定感は得られていないが、パッティングストロークも、以前よりもかたさがやわらいだように見える。ストレートなヘッド軌道と、寸分の狂いもないスクエアフェースのインパクトを目指すあまり、かための動きだった。しかしこの点も、ショット同様、クラブの重みや慣性に任せるといった要素も見えるストロークになった。
マスターズでは得意のアイアンショットとパッティングが噛み合い、3日目は首位に立つと一気に2位以下を突き放した。15番イーグル、16番バーディー、17番バーディーは、圧巻だった。
すべてをコントロールしようとし過ぎない
松山英樹は「完璧主義者」に近いものがある。ピンに絡むようなショットを打っても、納得のいくスイングでないと首を傾げたりする。少し、自分で自分を追い込みすぎていたのかもしれない。
それがコーチのサポートもあり、やわらいだ。技術的な面だけでなく、ショットやパットの後の表情を見ると、精神的な面でも、これまでよりも自然体でいるように見える。
完璧を求めていることに変わりはないだろうが、そこに対するアプローチが、より良いものになったのではないだろうか。メジャー2勝目、3勝目、グランドスラム(4大メジャー全制覇)。松山にはさらなる期待をして良さそうだ。
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