もの足りなさを感じる開幕3戦結果
今年も日本女子ゴルフ界で主役級の活躍を期待されている渋野日向子。開幕戦のダイキンオーキッドレディスでは13位タイ、2戦目の明治安田生命レディスでは57位タイ、3戦目のTポイント×ENEOSゴルフトーナメントは11位タイと、まずまずのスタート。
しかし、2019年の全英女子オープン制覇や日本ツアー賞金女王争い、2020年の全米女子オープン最終日終盤までの優勝争いを見てきたファンにとっては、やや物足りない結果にも思えるだろう。だが、昨年までの渋野の取り組みや成績の流れを整理すると、今年も期待できそうだ。
昨年も苦しんだ開幕直後
昨年、渋野は開幕戦となった6月のアース・モンダミンカップに加え、米女子ツアー遠征のスコットランド女子オープンとディフェンディングチャンピオンとして臨んだ全英女子オープンと、開幕から3戦連続予選落ちした。
しかし4戦目となったメジャー、ANAインスピレーションで予選を通過以降は、4戦連続予選通過で米ツアー遠征を終え日本ツアーに復帰。復帰初戦こそ予選落ちしたもの、その後は30位タイ、23位タイ、5位、3位タイと調子を上げ、全米女子オープンの優勝争いにまでつなげた。
ショートゲームの成長
全米女子オープンで優勝争いできたのはショートゲームの成長によるものが大きい。
昨年の開幕前、例年以上に苦手としていたショートゲームの強化に取り組んでいが、開幕直後は成果が思うように発揮されなかった。強風だった全英女子オープンでは技のバリエーションを増やして戦ったものの、まだ自分のものにできていなかったからか混乱しているようにも見えた。
しかし徐々に開幕前の取り組みや米ツアーでの経験が結果に表れ始め、全米女子オープンでは地元メディアに「パーセーブオブザイヤー」と評されるほど、難しい状況からのアプローチショットをピンに寄せた。バンカーに関しては自ら「“入っても良し”とすることで、コースマネージメントの幅が広がる」とまで言えるほどになった。この自信は今年の結果につながるだろう。
スイング改造
プロテスト合格前から指導を受けてきた青木翔コーチから卒業した渋野は、石川遼から助言を仰ぐようになったようで、トップオブスイングがコンパクト(フェースが閉じ、スイングプレーンがフラット(横振り気味))になったのは、その影響によるものだと思われる。「(良い方に)予想外。少しずつ良くなって行ければ」「ショットは良かっただけに、パットの不調が悔しい」といった開幕3戦中のコメントからも、スイング改造について悪印象ではないようだ。
「石川以上にスイングの改造を続けている選手はいない」と言われるほどの改造の技術的部分に限らず、注意点や心構えまでその経験を吸収することができれば、必ずプラスになるだろう。
昨年はスイング改造をして臨んだにもかかわらず結果が出なかったため、開幕直後には「余計なことはやらない方が良い」などと言われた。今年も開幕3戦結果が出ていないことから、ネガティブな論調の言葉も聞こえている。だが、昨年はツアー優勝こそなかったものの終盤は日本ツアーで上位に食い込み、全米女子オープン最終日の終盤まで優勝を争ったのも事実。今年もニュースイングの消化が進むにつれて、結果を出せるのではないだろうか。
「変化を恐れないこと。変化していることにおびえないことを大事に、この1年はやっていきたいです」。これは、JLPGA公式 女子プロゴルフ選手名鑑 2020-2021 の渋野の特集記事にある渋野の言葉 だ。指導者からの卒業やスイング改造など様々な変化を進化につなげようとしているのかもしれない。
ショートゲームとニュースイングの融合
日本女子ツアーだけを見ても原英莉花や古江彩佳、稲見萌寧といった同世代のライバルが多い。昨年の全米女子オープンを制したのが、海外ツアー初出場のキム・アリムだったことからも、実力ある新しい選手がどんどん誕生している。
そんななか、周囲が期待する結果を出すことは並大抵のことではない。しかし、成長したショートゲームや重ねてきた経験に取り組んでいるニュースイングを融合すれば、2019年11月のエリエールレディス以来の日本ツアー優勝はもちろん、米ツアー優勝やメジャー2勝目も狙えるはず。
“跳ね返る”もしくは “立ち直る”を意味し、ゴルフではボギー以下の悪いスコアを出した直後のホールでバーディー以上の良いスコアを出すことを「バウンスバック」という。これは渋野の代名詞だ。今年はまだ力を発揮しきれていない渋野だが、「バウンスバック」は遠くない。
【関連記事】
・渋野日向子、東京五輪へ全米女子オープンで証明した新たな武器
・日米で大きく存在感を示す韓国人選手に共通するスイングの特徴
・「プラチナ世代」古江彩佳、東京五輪へ急浮上の底知れぬ実力