肉体改造で昨季より体がスケールアップ
6月に開催された今季の日本女子ツアー開幕戦のアース・モンダミンカップに出場した渋野日向子は、昨季よりも体が大きくなっていた。トレーニングを積み肉体改造をしたのだ。渋野のフィジカルを担当している斎藤大介トレーナーによると、「体重は増えたが体脂肪率は増えていない。つまり筋肉が増えた」とのこと。
練習では肉体改造の成果が出ているようで、渋野本人も飛距離が10ヤードアップしたと話している。ヘッドスピードがアップしたドライバーのシャフトは、昨季使用していたものよりも硬いスペックのものに変えた。
渋野の肉体改造に対する否定的意見
飛距離はアップしたものの、渋野自身が新しい体にまだ慣れていないのか、アース・モンダミンカップでは1打足りずに想定外の予選落ち。グリーン上で受けた2打のペナルティーも影響しての予選落ちだったが、内容も渋野本来のプレーには程遠いものだった。
この結果を受けて、「ゴルフは変えなくていいところまで変えてしまうと、スコアを作れなくなってしまう怖さがある。余計なことはやらない方がいい」「今回のチェンジは渋野にとってどうしても必要だったのか」といった肉体改造に対する否定的な意見も聞かれた。
2022年本格参戦を目指している米女子ツアーの現在の飛距離
チーム渋野が肉体改造に踏み切ったのには理由がある。渋野が目指す舞台の飛距離水準が、今後もさらに高まっていくことが予想されるからだ。渋野には2021年の米女子ツアー予選会に挑戦し、2022年からそのツアーに参戦するというプランがある。東京オリンピック出場より先の目標は、海外メジャー全制覇だ。
参戦予定の米女子ツアーはロングヒッターの選手が多い。昨季日本女子ツアーでドライビングディスタンス(以下DD)が7位相当だった畑岡奈紗は、米女子ツアーで44位だった。日本女子ツアーで12位だった渋野は、現状のままの飛距離では米女子ツアーでアドバンテージを得ることができない。
米女子ツアーの飛距離上位者には、まだ実績がなくとも渋野と同じぐらいの年齢の若手が多い。昨季DD1位のアン・ヴァン・ダム(24歳)も2位のマリア・ファッシ(22歳)も2019年から参戦。また、現在295.33ヤードを記録し、8月7日時点で1位のビアンカ・パグダンガナン(22歳)も今季から参戦している。
このように経験を重ね、ショットの精度やコースマネージメントスキルを向上させた選手に対抗するには、飛距離の差を広げられないようにすることが重要だ。
ただ、昨季の渋野の飛距離で全英女子オープンを制覇したということは、戦えないことはないのかもしれない。渋野と同等の飛距離である畑岡は米女子ツアーで3勝を挙げ、現時点で世界ランキング4位。昨季米女子ツアー賞金女王のコ・ジンヨンのDDは、畑岡よりも下位で76位(258.08)だった。
しかし、今後の米女子ツアーという舞台や全メジャー制覇という目標に加え、現在の力量やポテンシャル、プレースタイルなどトータルで考えた場合、チーム渋野は「飛距離アップのための肉体改造が必要」と判断したのだろう。
連覇を目指す全英女子オープン
ゴルフに限らず、どのスポーツでも肉体改造には賛否両論がある。それは、出せる力が増えたとしてもスイングやフォームのバランス、微妙なフィーリングなどが失われやすいからだ。否定的意見を一掃し周囲に認めさせるには、結果を出すしかない。渋野にはリスクを乗り越え、結果を出して欲しい。
8月20日から開催の全英女子オープン出場のため、コーチ兼キャディの青木コーチとともに連覇をかけ渡英した渋野。全英女子オープン前哨戦のスコットランドオープンにも出場する予定だ。
開幕戦のプレーを見ると、期待するのは酷なように感じるかもしれない。だが、昨季は予選落ちした伊藤園レディスの翌週、エリエールレディスで優勝している。持ち前の失敗を引きずらない前向きな気持ちと高い修正能力を武器に、今季も英国での躍動を期待したい。
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