0.75インチ長くしたパター
タイガー・ウッズが、8月6日から開催された全米プロゴルフ選手権に出場。ツアー再開後2試合目で3週ぶりのトーナメント出場となり、結果は37位だった。
ウッズはこれまでのものとは違うスペックのパターで、全米プロに臨んでいた。ソールにウェイトをコントロールできるアジャスター機能が搭載されているものに変更したのもそうだが、それ以上に大きな変更点として挙げられるのが、長さを0.75インチ長くしたことだ。
1インチは2.54センチなので、0.75インチは約2センチ。たった2センチの変更だが、これが大きな意味を持つ。
腰部の負担を減らし、練習量を確保
度重なる怪我で、これまで膝を5度、腰部を4度手術してきたタイガー・ウッズ。怪我した箇所の状態を気にしながら、練習メニューや試合のスケジュールを組んでいる。過度な練習や試合をこなすと、再び体が悲鳴を上げかねないからだ。しかし、試合で結果を出すためには、練習量が必要。そこで目を付けたのがパターの長さだ。
パッティングは、ドライバーショットなどのロングゲームに比べパワーを必要としないものの、長時間練習すると腰部に負担がかかる。長さが短いため、アドレス時の前傾姿勢が深くなるからだ。パターを長くすると前傾姿勢が浅くなり、腰部への負担を減らすことができるため、それまでよりも長い時間の練習が可能になる。
パッティングはロングゲーム以上に感覚が重要となる。ロングゲームは経験で構築された理論を生かしてコース攻略できても、パッティングは理論を活用できる範囲が狭く、感覚勝負の色が濃い。感覚を研ぎ澄ませるための練習量を確保するために、タイガー・ウッズはパターを長くしたのだ。
パッティングも支えていた圧倒的な強さ
全盛期のタイガー・ウッズはショットだけでなく、パッティングも素晴らしかった。PGAツアー公式ページには、2004年度以降のSG:パッティング(パッティング貢献度)が掲載されている。それを見ると2010年度以前のパッティングの方が良く、それ以降のパッティングはタイガーらしさが影をひそめている。
見据えるのはジャック・ニクラウスのメジャー18勝
勝利するために練習量を増やし、練習量を増やすためにギアスペックを変更する。「0.75インチ変わると別物のパター」と言われるぐらい、約2センチの変更は大きい。だが、そこはタイガー・ウッズ。新しいスペックのパターを自分の手に馴染ませてくるのではないだろうか。
昔とは違い、多くの選手がタイガー・ウッズより飛距離を出すようになった。2000年の全米オープンでの15打差圧勝劇のような勝ち方は、もう難しいかもしれない。しかし昨季のマスターズのように、ショットの精度とパッティングをかみ合わせ、ライバルをかわしきる勝ち方はまだ可能だろう。
「昔は1日4~6時間、パッティングの練習をしていた」と語るタイガー・ウッズ。練習量を取り戻し、少しでも全盛期を支えていたパッティングに近づけることができれば、あと3勝に迫ったメジャー歴代最多勝利記録への期待がより一層膨らむ。
今年残されたメジャーは全米オープンとマスターズの2試合。いずれも今年は無観客での開催だが、18番ホールでウィニングパットを沈めて、0.75インチ長くなったパターを左手で頭上にかざし、関係者たちの拍手に応えるタイガーを見てみたい。
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