「LAPS」で体現できないのはケガくらい
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―こちらに映っているコースって実際のものと同じですか?
そうですね。これは市販されている「iRacing」というソフトです。ただ、これだけではゲームなので、他との違いとしてはハンドルの重さ、シートの角度、アクセル、クラッチ、ブレーキがそれぞれ忠実に再現されているということですね。GTならGT仕様、フォーミュラならフォーミュラ仕様にできるところがすごいところです。実際にLAPSに乗って出したタイムと、現地で同じマシンに乗った時のタイムって全く同じなんですよね。
―すごい、日本にいても全世界のコースを体験できるということですね。
そうです。実際にプロのレーサーがここでLAPSに乗り、そのコースを体験できると好評いただいてますね。エンジンの振動やタイヤが拾った路面からのインフォメーションをトランスデューサーが再現してくれます。また、このコースにはここにバンク(溝)があるとかも再現されているので、ライン取りも練習できますね。
また、セッティングもできますし、ラバーアップ(タイヤのゴムがだんだん路面に乗ってグリップが上がっていくこと)も再現してます。日向、日陰で路面温度の違いも出ます。
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―そこまで再現されているんですか?
他にもシフトミスをすると実際にマシンが壊れたりします。これで体現できないのはケガくらいですかね(笑)。1階にもう1台作りかけの物があるんですが、それはフレームが動くのでクラッシュした時などそれなりにGがかかるので、もうぶつかりたくないなと思わせるような作りになっています。
―Gって体感できるものなのですか?
Gってかけ続けるのが難しいんですよね。いくら動かしても瞬間的なGにしかならなくて。継続してGをかけ続けるのは難しいんですが、人間の頭を錯覚させることは可能です。例えば、シートベルトを後ろに引っ張ることで、疑似的なGが再現できるんですよ。
―ちなみにおいくらくらいするんですか?
これは200万円くらいですね。1階にあるシートが動くものは1000万円以上しますね。従来の「LAPS」の固定タイプと違って、シートが動くのでパーツの耐久性や強度を上げないと駄目ですし、より軽い部品が必要で材料費が高いんです。もうほとんど実際の車と同じですね(笑)。研究費もすごいかかりました。
夢のF1ドライバーとも対戦
―最近、レーシングシミュレーターを扱う所って増えてきているんですか?
ここ数年で増えてますよ。一般の人で、ケガが怖かったり、資金面で乗れなかった人たちのニーズが増えてきているからだと思います。
実はもうこの大会があるんですよ。eスポーツですね。実は私も出ております。オンラインで年間4シリーズあって、1シーズン全12戦が開催されています。そういったバーチャルレースに、ここ(LAPS)から参戦できるんです。
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―エントリーした人が1つの場所に集まらなくてもいいってことですか?
そうです。これで世界の人たちと対戦できるんです。それが一番可能性を感じるところで、点と点を結べるんです。カナダやアメリカの人とも対戦できます。
―実際、皆さんどういったお店から参加されているのですか?
家から参戦している人もいますよ。一画面でも安いハンドルコントローラーやペダルを机に引っ掛けて、簡易的にされている人もいます。ただ、ある程度しっかりしたツールはあった方が良いですね。ソフトから出される細かいインフォメーションを感じることで、集中しやすくミスもしにくくなりますので。
実際にこれ(LAPSシミュレーター)を使う選手たちは速いです。これで結果を残すと、他の参加者から「何を使っているの?」と聞かれることがよくあります。一度、私が世界一のタイムを記録した時は、世界の人たちからメッセージがすごいきましたね。
―話は変わりますが、現役ドライバーの白石さんでも世界一のタイムを一度しか記録できていないのですか?
それが難しいんですよ。なぜなら、世界で活躍しているドライバーがいるので。現役のF1ドライバーや元F1ドライバーもやってたりします。世界中のバーチャルレーサーと実際のリアルレーサーたちが混在していて非常にハイレベルです。レース自体は、実際のレースと何も変わらないですね。私でもかなり緊張します(笑)。
―すごいですね。「LAPS」に来れば誰でもこのレースに参加できるのですか?
いえ、ちゃんとライセンステストを受けていただいてます。まともに走れないと面白くないですし、他に迷惑がかかるので。最低限の基準を設けてあります。
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―何人くらいこの「iRacing」に参加されているのですか?
多いレースで1万人くらいですかね(登録者は40万人以上)。ただ、日本人は少ないです。最近、この店きっかけでやり始めて、少しずつ増えてきましたね。将来的には国内でもプロの選手権がしたいです。
―今は現役レーサー、eレーサー、レーサー育成の3足のわらじということですね
そうですね。ただ、一番伸ばしたいのは次の世代の育成ですね。育成は面白い。子供は想像を超えてくるんですよね。この予想を裏切ってくるのがたまらないです。
ただ、この子たちもこのような設備が家にあるわけではないです。裕福な子たちばかりでないので。ドライバーシートにお金がいるこの時代を変えたいです。
―レーサーってお金かかりますもんね
スポンサーも付きにくい時代ですからね。ただ、このレーシングシミュレーターによって、モータースポーツブームが再熱してくれると思っています。
このレーシングシミュレーターは競技人口増えていくと思います。なぜなら、ケガもしないし、初期費用がかからない。ヘルメットなどの装備品もいらないですしね。この世界には可能性があると思います。みんなにもっと知っていただきたいです。車好きにとって夢の世界ですから。
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―今後のeレーシング、ブームが来そうな予感がしてきました
実際にマシンのデザインできますし、車にスポンサーのロゴデータも貼れるんですよ。eレーシングのマシンに広告費、この時代がもうそこまで来ていると思いますよ。
―夢のような体験をさせていただきました。今後のご活躍を期待しております。
ありがとうございました。
《プロフィール》
白石勇樹…1989年7月15日大阪府出身。2009年にスーパーFJ鈴鹿シリーズに参戦し、シリーズランキング2位を獲得。その後、アジアン・フォーミュラ・ルノー(AFR)シリーズで日本人初のアジアチャンピオンに輝く。現在は現役レーサーを続けながら、レーシングシミュレーター「LAPS」の開発、後進の育成にもあたっている。