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三足のわらじを履くレーサー白石勇樹② レーシングシミュレーター「LAPS」とは?

レーサー白石勇樹選手とレーシングシミュレーターLAPSⒸSPAIA
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現役レーサー、eレーサー、レーサー育成の3足のわらじを履く、白石勇樹選手にインタビューする機会をいただいた。全3回でお届けする。インタビュー第2弾は、白石さんが作りだしたレーシングシミュレーター「LAPS」とは?

3足のわらじを履くレーサー白石勇樹① 2輪から4輪を目指したきっかけとは?

レーシングシミュレーター「LAPS」とは?

レーシングシミュレーターLAPSⒸSPAIA

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―これは何ですか?

レーシングシミュレーターですね。元はプロのレーシングドライバーを鍛えるためのものです。これを作ろうとしたきっかけは、7、8年前に当時イギリスで所属していたチームのファクトリーにこういうシミュレーターがあったのですが、正直ローテクなもので…。何の練習もできないので、これなら自分で作った方がいいと思い、半年後、日本に帰ってきて見よう見真似でやってみました。

最初は自分の練習用だったのですが、やり始めて2年後にGLM株式会社の小間代表から「グランフロントでトミーカイラZZを置くからシミュレーターも置いていいよ」と言ってもらい、1台置かせてもらったらお客さんの列ができて、一般的にも需要があるのだと思い、ちゃんと店としてやろうと思いました。

―そのお店が拡大して行ったのですか?

別のブランドですが、心斎橋や梅田など5店舗くらい出店しましたね。ただ、通りすがりの人が経験して、もう来ないということは私のやりたいこととは違いまして。もっと一人に時間をかけてドライビングを教えたい。この方針が合う人たちと、今あるこの「LAPS」を作りました。

LAPSを手掛けたレーサー白石勇樹選手ⒸSPAIA

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―ここで実際にLAPSを使って、どのようなことをされているのですか?

ここでやっているのは細かいレーシングテクニックを、初級から超応用編まで教えています。プロのレーサーも来てくれます。金額はプロを目指す人であれ、プロのレーサーでも一緒です。 この店が出来て1年ちょいですが、LAPSを体験した小中学生の子でレースを始めた子が数名います。

―このLAPS以外で、シミュレーターを作っているところは日本でもあるのですか?

はい。古くからメーカーとしてされているところもありますし、ここ最近では個人でフレームを組んだりする方も増えた気がします。皆さん、それぞれ独自のアイディアや知恵を絞って作られています。「これが良い!」とかではなく、それぞれ乗り味やフィーリングが違っていて面白いです。クルマに個性があるようにシミュレーターにも個性があります。だから、いろんなシミュレーターに乗ってほしいです。

―白石さんのシミュレーターの個性は?

まず、ウチのシミュレーターで最も大事にしているのが“ドライビングポジション”です。フォーム(姿勢)が違うと力の入れ方や使う筋肉まで違ってくるので、非常に重要なポイントです。このように、私たちのシミュレーターは、フレームやハンドルの傾き、距離を変えられるように作られていて、そのクルマと同じポジションや姿勢でドライビングできます。

シミュレーターが入り口になる時代がそこまで来ている

―昔は4輪やるならカートが大事だと言いましたがどう思われますか?

カートは大事だと思います。ただ、カートから入る時代だけではもうないと思います。こういうシミュレーターとかが入り口になる時代が来ていると思います。

―値段も安くすみますしね

そうですね。フォーミュラーカーやGTカーは、カートよりもシミュレーターの方が感覚が近いですね。カートはカートで実際のGに振り回されながら走るのでいいですが、テクニックを養うにはシミュレーターの方がいいです。

―シミュレーターで育ったレーサーが出てくる時代がくるかもしれないですね

もう実際にいますよ。GTとか世界中の有名なレースとかには出てきています。しかも速いですよ。

LAPSを手掛けたレーサー白石勇樹選手ⒸSPAIA

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―他にシミュレーターの魅力ってありますか?

メリットは資金面、リスク的なものが大きいですね。例えば、実際のレースや練習で踏み込めそうで踏み込めない所を、ここに来て同じマシンのセッティングにして試すことができます。 ただ、うちではクラッシュに重みを持ってもらってます。子供たちにもしっかり教えて、クラッシュすると「ごめんなさい」と言ってもらうようにしています。現実の世界でクラッシュするとコストもかかるし、メカニックにも迷惑がかかる。これはしっかりと教育してます。これはゲームではないので。

次回LAPSをさらに詳しくご紹介。

レーシングシミュレーターLAPSⒸSPAIA

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《プロフィール》
白石勇樹…1989年7月15日大阪府出身。2009年にスーパーFJ鈴鹿シリーズに参戦し、シリーズランキング2位を獲得。その後、アジアン・フォーミュラ・ルノー(AFR)シリーズで日本人初のアジアチャンピオンに輝く。現在は現役レーサーを続けながら、レーシングシミュレーター「LAPS」の開発、後進の育成にもあたっている。