2年ぶりの「SEIMEI」復活
冬季五輪2連覇の王者、羽生結弦(ANA)がまた新たな伝説を残した。2月9日にソウルで行われたフィギュアスケートの四大陸選手権で、男子で初めてジュニア、シニアの全主要国際大会を制覇する「スーパースラム」を達成。ショートプログラム(SP)で世界最高得点をたたき出し、フリーも1位の187.60点をマークして合計299.42点で初優勝した。ジェーソン・ブラウン(米国)が合計274.82点で2位。冬季ユース五輪王者の16歳、鍵山優真(神奈川・星槎国際高横浜)が270.61点で3位に入った。
女子では金姸児(韓国)とアリーナ・ザギトワ(ロシア)が「スーパースラム」を成し遂げている。25歳の羽生は2018年平昌大会で滑ったフリー「SEIMEI」を約2年ぶりに復活させ、次に見据えるのは史上初の成功を目指す大技、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)。壁が高いことは十分承知の上で、3月の世界選手権(モントリオール)で究極の「SEIMEI」完成と王座奪回を目指す。
伝説のSP「バラード第1番」は完璧
シーズン中に異例の演目変更の決断を下したSPは完璧な出来だった。冬季五輪2連覇を達成した平昌大会で用いた伝説の「バラード第1番」。優雅に力強く、そして繊細に。氷上でジャンプと音楽がまさに美しく融合し、冒頭の4回転サルコーから4回転―3回転の2連続トーループ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)と流れるように次々と成功。出来栄えで4点台の加点も引き出した。
表現面を示す10点満点の5項目では全て9.50点以上で、音楽の解釈と演技表現は9.79点。まるで熟成されたワインのように圧巻の演技で自身の持つ世界最高得点を更新する111.82点をマークし、会心の笑みが広がった。
フリーは4回転でミス
一転してフリーで演じた2年ぶりの「SEIMEI」は苦しみ、完璧な出来とはいえなかった。演技前に氷がえぐられた穴を見つけ、集中力がそがれた面もあるだろう。
平昌では回避した冒頭の4回転ルッツで手をつき、後半に入れた2度の4回転トーループで着氷の乱れと回転不足による転倒。我慢の展開で3種類計4度の4回転ジャンプに挑んでサルコーを成功してぎりぎりで持ちこたえ、187.60点にとどまりながらも1位。別格の存在感で大会初の頂点に立った。
ただ単純比較はできないものの、合計299.42点は宿敵ネイサン・チェン(米国)の世界最高と比べると35.88点差。得意のSPは世界最高をマークしたが、フリーは4度の4回転ジャンプのうち1度しか成功せず、収穫と課題も残る結果でもあった。
失意から世界選手権で完全復活へ
昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルで最強のライバル、ネイサン・チェンに敗れて2位。続く4年ぶりに出場した全日本選手権でも宇野昌磨(トヨタ自動車)に屈して2位に終わった。
失意から立ち直るため、SPもフリーも五輪の演目に戻し、冬季五輪2連覇を遂げた韓国で、主要6冠のラストピースを獲得。世界選手権で3年ぶりの覇権に照準を合わせる。フリーで理想とする「SEIMEI」はどんな形で完成するか。チェンに勝つために、ジャンプ構成はどう組み直すのか。究極の大技、4回転半の投入は間に合うのか。新たなステージへ羽生の挑戦は終わらない。
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