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【平昌五輪レポート】各国のフィギュア団体戦略と会場運営について

2018 3/2 18:00藤本倫史
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Ⓒゲッティイメージズ

各国の戦略を比較

私は今回、2月12日に行われた平昌オリンピックフィギュアスケート団体戦の観戦を行った。今回のフィギュアスケートの団体戦は、各国の戦略がそれぞれ違っており、非常に見応えがあった。2月17日、羽生結弦は金メダル、宇野昌磨は銀メダルを見事獲得したが、その獲得した理由の一つに、日本チームのフィギュアスケート団体戦の戦い方が関係したのではないか。各国の戦略を比較していく。

カナダ
金メダルを獲得したカナダチームは全力で団体金メダルを取りにいく戦略であった。この戦略を行う上で、カギとなったのは長年チームを支えてきたパトリック・チャンの存在だった。

彼はソチ五輪銀メダリストでトップスケーターだが、20代後半になり、シングルでのトップ争いが厳しくなり、平昌五輪後の引退を表明していた。金メダルを母国にもたらそうとピークをこの団体戦に合わせ、ショートプログラムとフリープログラムどちらにも出場。フリープログラムで、最高得点を叩き出した。フィギュアスケートに関してはずぶの素人だが、この日、一番感動した演技であった。

さらにカナダは、エースの力だけでなく、女子、ペア、アイスダンスでも他国にはないバランスの良さが光った。どの種目も他国のトップ選手がシングルへ力を温存する中、カナダは団体での金メダルに照準を合わせ、それぞれのコンディショニングを上げ、チーム全員で栄冠を勝ち取った。

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ⒸSPAIA

ロシア
OARとして参加しているロシアも特徴ある戦い方であった。ドーピング問題があり、国として出場できない複雑な中で、改めてロシアの強さをPRする必要があった。 実は会場で一番存在感を示していたのが、ロシアの応援団。試合会場の一角を埋め尽くし、お手製のボードで各選手の応援をする姿は圧巻だった。 また、試合前にも会場を盛り上げようと、ウェーブを起こし存在感を示していた。

今大会、OARの中で一番金メダルを獲得する確率が高いのが、女子シングルだった。メドベージェワとザギトワという2大エースがおり、どちらかに金メダルを取ってほしいと考えていたのだろう。ケガで試合勘の少ないメドベージェワをショートプログラムに配置し、絶好調のザギトワはフリープログラムで演技を行い、チームは銀メダルを獲得した。 その結果、シングルでもザギトワが金メダル、メドベージェワが銀メダルを獲得。戦略が的中した形となった。

アメリカ
団体3位になったアメリカの戦略はどうだったか。
結果論にはなるが、トップ選手のネイサン・チェンを温存させていたらどうなっていたか。この団体のプログラムでは、本調子に見えなかった。しかし、シングルでのフリープログラムでは4回転を6回飛び、全て着氷させ、優勝した羽生結弦の点数を上回っていた。絶不調だったショートプログラムをしっかりと調整させていたらどうなっていたかと考えてしまう。

この日、ロシアに次ぎ、応援の存在感があったのがアメリカである。「U・S・Aコール」を連呼し、ロシア応援団に負けない応援をしていた。 国民の期待に応える必要があったと思うが、カナダチームのような思い切った決断はできなかった。

日本男子のメダル獲得戦略

日本はエースの羽生結弦を温存する戦略をとった。試合勘を取り戻すため出場という選択肢もあったが、シングルへ専念させることを決断。また、チェンのように宇野昌磨をショートプログラムとフリープログラムの両方に出場させる選択肢もあったが見送った。

今大会は日本から地理的も近く、この日も多くの日本人の方を見かけた。ファンに対して、このような戦略をとるのは苦渋の決断だったかもしれないが、結果的に、羽生と宇野は世界中を感動させる演技を見せた。

このように俯瞰的に各国のチーム戦略を見ると、興味深く、羽生と宇野がメダル獲得した事実を考えると。この団体戦を観戦できたことは日本人としては感慨深いものがあった。

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ⒸSPAIA

ホスピタリティの観点からみるオリンピック

私の本業でもあるスポーツマネジメントの観点からも、試合前後に会場運営の視察を行った。大会前から、メディアでは様々な問題が言われていたが、その中のホスピタリティ面を中心に述べていきたい。

まず、アクセスだが、私が観戦を行った江陵の会場へは駅からシャトルバスが出ていた。このシャトルバス、報道では本数が少ないと報じられていたが、私が行くと逆に手厚くされていた。ほとんど待ち時間がなく、試合前に多くのバスが並び観客を迎えていた。しかも、障がい者、高齢者、子連れ客などには手厚いサービスがなされていた。

私は今回の視察には、妻と1歳の娘を同伴したが、バス停の近くにいくと普通の列に並ぶのではなく、他のバスレーンに通され、通常のバスとは違うバスへ乗車することができた。 このバスは混み合うことなく、快適に会場へ向かうことができた。

ボランティアスタッフの現状と課題

会場へ着くと多くのボランティアが迎えてくれ、誘導をしっかりとしてくれた。ボランティアも親切で、特に大学生ボランティアの能力は高かった。私はある学生ボランティアにインタビューを行ったが、日本語で丁寧に受け答えができていた。その他にも母国語の韓国語と英語もでき多言語に対応している学生が多く、笑顔や対応の素早さにも好感が持てた。そういう意味では個の能力としては非常に高い印象を受けた。

しかし、マネジメントの観点から見ると問題があると感じた。まず、ボランティアがユニフォームとボランティア証を掲示したまま、来場者と一緒にサービスを受けていた。また、手持ち無沙汰なのかブースごとに集団で談笑している姿が散見された。 このような状況はおそらく管理や研修に問題がある。急造でボランティアを配置しているので、組織のマネジメントができていない。個の能力が高いがゆえに非常に残念であった。

東京オリンピックに向けて考えなければならないこと

会場の印象で行くと、競技場内でもパビリオンでもITを活用しているのは韓国らしいと感じた。しかし、肝心のホスピタリティの観点から行くと少し残念な部分があった。娘のおむつを交換しようと交換スペースを探したのだが、案内板などが無く、どこにあるかわからない。結局、ボランティア待機所で交換させてもらった。

一番残念だったのが、飲食物である。ボランティアに対しての食事の件で報道されていたが、観客に提供しているものも考えなければならない。 韓国料理は日本人も好きな人が多く、とても質が高い。しかし、会場内のレストランではビビンバやプルコギなどの人気メニューは時間がかかり、注文できた他の韓国料理は簡易なものばかりであまり質は高くなかった。 多くの人たちが利用し、急造の施設ということもあるが、江陵も美味しいものがたくさんある土地である。韓国料理をPRするためにも工夫する必要があったのではないか。

4年に1度の世界最大のイベントを生かすも殺すも主催者次第である。2020年に開催される東京五輪が近づいている中、良い点や悪い点を他の大会から学び、日本もしっかりとしたマネジメントをしなければならないと改めて感じた視察であった。


《ライタープロフィール》 藤本 倫史(ふじもと・のりふみ) 福山大学 経済学部 経済学科 助教。広島国際学院大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了。大学院修了後、スポーツマネジメント会社を経て、プランナーとして独立。2013年にNPO法人スポーツコミュニティ広島を設立。現在はプロスポーツクラブの経営やスポーツとまちづくりについて研究を行う。著書として『我らがカープは優勝できる!?』(南々社)など。

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