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フィギュアスケート山本草太、3度の手術乗り越えた「岸和田魂」でGP初制覇

2023 11/5 06:00田村崇仁
山本草太,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

4回転の精度と表現力でシニア8季目の悲願

今季のテーマは『NEW草太』。バンクーバーで行われたフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第2戦、スケートカナダで10月28日、男子は23歳の山本草太(中京大)がシニア8季目にして悲願のGP初制覇を達成した。

氷上で自信を取り戻した4回転ジャンプの精度と観客を引き込む表現力の高さで「NEW草太」の新境地を見せ、合計258.42点をマークした。

14歳で挑んだ2014年ジュニアGPファイナルで2位に入り、次世代のエース候補として将来を嘱望されたホープ。愛知みずほ大瑞穂高時代に16歳で出場した2016年の冬季ユース五輪(リレハンメル)では日本選手団主将を務め、金メダルに輝いた。

だがその翌月に悲劇が襲う。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒して右足首を骨折。3度の手術の苦難も乗り越え、昨季GPファイナル2位と躍進した173センチの不屈のスケーターは出身地・大阪府岸和田市で培った「岸和田魂」で完全復活を印象付けた。

SP「カメレオン」で新境地、フリーは演技構成点トップ

89.56点でトップに立ったショートプログラム(SP)は世界的振付師のデビット・ウィルソン氏が担当する「カメレオン」。アップテンポな曲調に乗って冒頭の4回転―3回転の連続トーループを決めると、続く4回転サルコーは氷に手をつきながら何とか着氷。後半は課題のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も成功させた。

中継局のインタビューで「結果が出ないもどかしいシーズンをすごく経験してきたので、昨シーズンは世界のトップと戦えるのがすごく楽しいと思えた。自分に自信が持てるようになったのはあるかな。その気持ちを忘れず、今シーズンもいきたい」と意気込んでいた通り、演技構成点でも評価される伸びやかなスケーティングを披露した。

フリーは「エクソジェネシス交響曲第3番」の曲調に合わせ、サルコー、トーループの2種類3本の4回転をすべて成功。トリプルアクセルで転倒したものの、フリー3位ながらステップでも観衆を沸かせ、構成力、演技力、スケート技術を評価する演技構成点は83.82点でトップだった。

2年連続ファイナルへ実力者が新たな戦い

スケートカナダでGP初優勝を遂げてシリーズ上位6人によるファイナル進出へ一歩前進した山本は、公開された中継局の動画で「今季もファイナル進出は目標。挑戦者の気持ちで、そのためにもスケートカナダはすごく重要な大会だった。またさらに進化したNEW草太を見せられるように頑張りたい」と語った。

『25ans』公式アカウントによる動画では、スケートカナダで4位だった友野一希(上野芝ク)と息の合った掛け合いも見せており「生まれ変わっても自分でありたいし、スケーターでありたい」と競技への飽くなき情熱を吐露している。

2022年12月にトリノで開かれたGPファイナルでは宇野昌磨(トヨタ自動車)が4種類の4回転ジャンプを決めて初優勝し、山本草太は274.35点で2位。クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を成功させた新星イリア・マリニン(米国)は3位だった。

思い起こせば、2014年のジュニアGPファイナル(バルセロナ)でも当時16歳の宇野昌磨が優勝し、山本は2位だった。次戦のGPシリーズ第4戦中国杯(11月、重慶)。世界王者になった宇野の背中を追い、飛躍のシーズンへ新たな戦いが始まっている。

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