3年後のミラノ・コルティナ冬季五輪へ強力な援軍
フィギュアスケート男子で2022年北京冬季五輪銀メダリスト、20歳の鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)が左足首の故障から復帰し、心機一転の新シーズンをスタートさせた。
新コーチ陣に2014年ソチ冬季五輪銅メダリストで欧州女王に5度輝いたイタリアの「至宝」、36歳のカロリナ・コストナーさんを迎え、目指すのは美しい滑りと表現力のさらなる強化。コストナーさんと言えば現役時代、長い手足を生かして滑らかな美しいスケーティング技術で世界を魅了した女性スケーターであり、2006年トリノ冬季五輪ではイタリア選手団の顔として開会式の旗手も務めた。
ジャンプなど技術面の指導は五輪2度出場の父親、正和氏が引き続き担当するというが、3年後のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪で金メダルの目標に向けて強力な援軍を得て総合力アップの態勢を整えた。
故障から約1年半ぶりの国際大会で復帰戦V
9月10日、イタリアのベルガモで行われたロンバルディア杯は故障から約1年半ぶりの国際大会復帰戦だった。鍵山は男子ショートプログラム(SP)で91.47点を出して首位に立つと、幻想的なテーマ曲『Rain, In Your Black Eyes』を演じるフリーでは174.12点をマークして1位となり、合計265.59点で圧巻の優勝。
フリーは冒頭の4回転サルコーで3.69点の加点を引き出し、続くジャンプは抜ける形になったが、ステップ、スピンで最高難度のレベル4。表現力に磨きがかかり、緩急自在のエッジワークも美しく、構成力、演技力、スケート技術を示す演技構成点も全項目で9点台をたたき出した。
演技後の採点を待つ「キス・アンド・クライ」では父やコストナーさんと笑顔でうなずく場面もあり、自身のツイッターで「SP、FSではミスはありましたが最後まで楽しく滑ることができて良かったです。今大会で得たこと、課題を次に活かしてもっと完璧な演技ができるように頑張ります!」と手応えを口にした。
NHK杯で宇野昌磨と直接対決も
2020年冬季ユース五輪を制し、シニアに本格的にデビューして世界選手権2位とトップ選手に仲間入り。161センチと小柄ながら、もともと総合力の高さは勢いだけではなく、将来性豊かな底力を感じさせる。
世界屈指の美しさと定評のあるジャンプに加え、さらに伸びやかなスケーティング技術や表現力に磨きが掛かれば、けがのブランクを乗り越えた今季の活躍はより期待が高まりそうだ。
今季のグランプリ(GP)シリーズは第3戦のフランス大会(11月3~5日・アンジェ)が初戦となり、最終第6戦のNHK杯(11月24~26日・大阪)では世界選手権2連覇の宇野昌磨(トヨタ自動車)との直接対決も注目される。
ロンバルディア杯で公開された中継テレビ局の動画によると「ジャンプ以外の部分で進化した部分が見せられたらいい。少しでも強くなって帰ってきたたなと思ってもらえるよう頑張る」と新たな決意を表明した。
鍵山が語る「進化した部分」とはもちろん表現面だろう。けがの功名として表現面を磨く一方、ジャンプも研ぎ澄まさせている。元世界女王の浅田真央さんらを指導した振付師のローリー・ニコルさんにも助言を得ており「僕が成長できるチームだと思うので、世界選手権まで見据えて少しずつ小さな階段を上りながら、目の前にある小さな目標をクリアしていきたい」と冷静に自身の成長曲線を思い描いた。
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