今季初戦は3位、新SPは命の誕生描いたテーマ曲
フィギュアスケート女子で世界選手権2連覇を達成している23歳の坂本花織(シスメックス)が、1968年グルノーブル冬季五輪金メダルのペギー・フレミング(米国)以来56年ぶりの偉業となる世界3連覇の目標を掲げ、日々鍛錬と位置付ける新シーズンへの一歩を踏み出した。
今季のショートプログラム(SP)は、産婦人科医が主人公で新しい命の誕生を描いたドラマ「コウノドリ」のテーマ曲で「Baby,God Bless You」の新演目。ピアニストの清塚信也氏が手がけた作品だ。今年、めいっ子とおいっ子が相次いで誕生したことで自らこの曲を選び、新たなスケート人生の原動力とエネルギーになっているのだという。
今季の新フリーは米国の女性R&B歌手、ローリン・ヒルのボーカルが響く重厚なピアノ曲「Wild is the Wind/Feeling Good」でミステリアスな雰囲気も漂うプログラム。持ち前の伸びやかなスケーティング技術を生かせる曲調でもある。
8月中旬、滋賀県大津市の木下カンセーアイスアリーナで行われた今季初戦の「げんさんサマーカップ」は合計187.62点の3位だった。SP2位で発進したものの、フリーのステップでリンクの溝にはまってしまい転倒。後半のジャンプでも珍しく転倒するミスがあり、シーズンの本格化を前に課題を確認するスタートとなった。
海外のオータム・クラシックは優勝と上々の出来
一方、海外大会の初戦となった9月15日のオータム・クラシック(モントリオール)では早くも上々の出来だった。SPはジャンプ全てで加点を引き出すなど75.62点をマークして首位に立つと、フリーも127.58点で1位となり、合計203.20点で堂々たる優勝。
ジャンプでは坂本の代名詞でもあるダブルアクセルなど持ち味のダイナミックな跳躍を随所に披露し、2位のカイヤ・ロイター(カナダ)に30.52点をつける圧勝だった。
黒を基調に金が散りばめられた新衣装。しっとりとした雰囲気に表現力豊かな振り付けで、大人の魅力をアピールし、存在感を見せつける本格的なシーズンインとなった。
世界女王でも「まだまだ成長段階」と飛躍期す
普段は明るくしてお茶目な人柄でコメント力も高く、周囲に笑いが絶えない「ザ・関西人」スケーター。日本スケート連盟の公式サイトで、坂本は新シーズンに向け「私自身まだまだ成長の途中段階」とさらなる飛躍を期す。
長引く紛争の影響から国際大会でロシア勢の不在が続く中、世界女王に君臨して追われる立場になっても「やりたいこと、やってみたいこともたくさんあります。成功も失敗も全てこれからの糧になると信じて、どんなことがあっても自分らしく精一杯戦い抜きます」と挑戦者の気持ちを失っていないことも強みだ。
銅メダルを獲得した2022年北京冬季五輪後は一時期モチベーションが低下する時期もあったと伝えられているが、今季は心身の充実ぶりが漂う。「日々鍛錬」の精神を失わず、世界選手権3連覇、そしてその先にある2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪出場へ一歩ずつ向かう。
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