全日本V、世界選手権は日本勢最高11位
フィギュアスケートのアイスダンスで「超進化」を遂げ、海外から「革新的なダンス」と称賛されてきた村元哉中(30)、高橋大輔(37)組=関大KFSC=が5月2日、笑顔で今季限りでの現役引退を表明した。
「かなだい」と呼ばれ、ファンから親しまれたペアは競技の第一線を「卒業」するが、すがすがしい2人の笑顔を見ると、やりきった思いと次への明確な目標があるのだろう。今後もカップルを組んでプロスケーターのアイスショーに出るだけでなく、それぞれ「表現者」として個人でも活躍の場を広げていく計画だ。
結成3季目となった今シーズンは、目標に掲げた全日本選手権で念願の優勝。3月の世界選手権では合計188.87点で日本勢過去最高に並ぶ11位と好成績を残した。
息の合ったツイズルや力強いリフトはペアとしてまだまだ「超進化」の途中だったが、インスタライブでも2人はファンに現役引退への思いを語り、高橋がシングル時代に大けがを負った古傷の右膝が「限界を感じた」と言うほど悪化し「自分で自分の体をコントロールできないのが大きかった」と理由を説明した。2月の四大陸選手権後、焼き鳥店で引退の意思を告げた高橋が男泣きしたエピソードも紹介された。
男子で世界選手権を初めて制した高橋は2014年に一度は競技生活から退き、復帰後の2020年にアイスダンスに転向。「氷上の社交ダンス」とも呼ばれる世界へ誘った村元は「これ以上、最高のパートナーはいない。新しいパートナーを探す選択肢も出てこなかった」と高橋の決断を受け入れ、ともに引退に至った経緯を明らかにした。
プロとしてエンタメの世界へ新たな挑戦
2人は今後も「かなだい」として新たな作品に挑戦するほか、プロスケーターとしての未来に目を輝かせる。
高橋は演出を手がけるアイスショー「アイスエクスプロージョン2023」の経験も踏まえ「引退はしても見せていくということへの気持ちは全然変わらない」と新たな決意を表明。40歳を一つの区切りとして、アイスショーやエンタメの世界への関わり方に一歩ずつ着実に前進していく覚悟をにじませた。
村元も「2人で大きなアイスショーなど何かを一緒にしたい思いが強い。これからの可能性、競技とはまた違う魅力を感じている」と一人のスケーターとしても表現に再挑戦する意欲を示した。
高橋はインスタライブでスケート靴について質問されると、米大リーグの大谷翔平(エンゼルス)をちょっぴり意識し、アイスダンス用とシングル用を掛け合わせた「二刀流」にする考えを苦笑いで説明。社交ダンスやタンゴなど新たな世界観も話題に触れ、村元は「振り付けにも挑戦したい。“かなだい”としていろいろ経験し、今度は見たことのないアイスショーもやってみたい」と夢を描く。
2人は表現者としてライバル
アイスダンス転向で鍛え抜いた「肉体改造」を問われると、高橋は「50歳まではこの体をキープする」と即答。結成2年目のシーズンは、日本の伝統をユニークな音楽と振り付けでアレンジした「ソーラン節&琴」のリズムダンスを披露したのが実に印象深い。
2022年2月の北京冬季五輪は惜しくも出場の夢が叶わなかったが、2022年1月の四大陸選手権(エストニア・タリン)では日本勢で過去最高位の銀メダルを獲得して成長ぶりを証明した。
高橋と村元は「パートナーでもあり、表現者としてのライバルでもある」のだという。「かなだい」ペアは今後も新たなステージでハーモニーを奏でながら切磋琢磨していく。
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