36歳、村元哉中とのペアで「超進化」証明
フィギュアスケートの世界選手権は3月23日~26日までフランスのモンペリエで開催され、アイスダンスで今月16日に36歳の誕生日を迎えた高橋大輔が村元哉中(ともに関大KFSC)とのペアで9年ぶりに、世界の舞台に戻ってくる。
「かなだい」の愛称で呼ばれる2人は2月の北京冬季五輪出場の夢は届かなかったものの、1月の四大陸選手権(タリン)で合計181.91点で銀メダルを獲得し、同種目の日本勢で2018年大会の村元、クリス・リード組の3位を上回る最高順位をマーク。まだ結成2季目で「超進化」する表現力やスケーティング技術は海外メディアからも称賛が送られた。
米フィギュア専門誌「IFSマガジン」では2月下旬、村元、高橋組の歴史と題した特集記事を掲載し「高橋はシングルの引退からアイスダンス転向という誰も想像できないことを成し遂げた。2人のデビュー当時はまだ少し粗かったが、2年後にはプログラムのパフォーマンス面、実行力、表現力が大会ごとに向上し始めた」と周囲の予想を上回る成長を評価。
米国で調整する2人がリズムダンスに集中して練習し、世界選手権に向け「完璧な演技と過去最高順位」を目指しているコメントを紹介した上で「2人の決断がどうであれ、世界で示した存在感は母国のアイスダンスに好影響を与えている。(2021年)12月の全日本選手権はダイナミックな2人組をライブで見ようと観衆は満員だった。彼らの成功は日本の若いスケーターたちにも新たな分野を考えるきっかけを与えている」と相乗効果を指摘した。
高橋大輔、初出場は高校生で11位
高橋大輔にとって世界選手権デビューは2004年3月、ドイツのドルトムントだった。2002年に日本男子初の世界ジュニア選手権優勝を果たし、次代のエースと期待された当時18歳のホープはフリーで4回転―3回転、3回転半―3回転のコンビネーションジャンプを両方とも成功させ、11位と健闘した。
ショートプログラム(SP)ではフラメンコ調の音楽に乗って鋭いステップを踏み、高難度ジャンプだけでなく、スケート本来の滑りの美しさを強く印象付け、本領を発揮した。エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)が2年連続3度目の優勝を飾った。
2007年世界選手権は「オペラ座の怪人」で日本男子初の銀メダル
初の快挙を遂げたのは2007年世界選手権(東京)だった。
シニアでも着実に成長し、2年ぶり3度目の舞台でSP3位につけ、フリーでも地元開催の大きな重圧をはねのけて順位を上げ計237.95点。五輪、世界選手権では日本男子の史上最高位となる銀メダルに輝いた。
ブライアン・ジュベール(フランス)が240.85点で初優勝。3連覇を狙ったステファン・ランビエル(スイス)は3位だった。
高橋は冒頭の4回転トーループジャンプで着氷の際に手をついたが、その後は2度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決めるなどほぼ完ぺきな演技。終盤の見せ場、ストレートステップで会場を魅了すると、高橋は感極まって泣きだした。
スピンを終え「オペラ座の怪人」が仮面を剥ぐしぐさでフィニッシュ。泣き顔の「怪人」はフリーで最高得点をマークし、総立ちの観客に応えた。
2010年トリノ大会は名作映画「道」で悲願の金メダル
悲願の金メダルに輝いたのは2010年3月の世界選手権(トリノ)だった。
直前のバンクーバー冬季五輪で銅メダルを獲得した自信を胸にSPで首位に立つと、フリーでもトップの168.40点をマーク。今季世界最高の合計257.70点で日本男子史上初の優勝を果たした。右ひざ靱帯断裂の大けがを乗り越えて復活したエースは日本の男子で初めてメダルを獲得した五輪に続き、新たな歴史をつくった。
イタリアの巨匠、フェリーニ監督の名作映画「道」の世界を体全体で表現。持ち味のステップ、スピンはすべてが最高難度のレベル4を獲得し、表現力を示す演技点は2位に10点以上の大差をつける圧勝だった。
パトリック・チャン(カナダ)が2位となり、ブライアン・ジュベール(フランス)が3位だった。
「年男」新たな歴史へ決意
高橋は2014年世界選手権をけがで欠場しており、アイスダンサーとして復活する今大会は9年ぶりの挑戦となる。
自身のインスタでは世界選手権に向け「全日本での力を出しきれなかった不甲斐なさ、悔しさをバネに、全力で頑張ります!」と決意を表明している。そして「年男なのできっと良い一年になるはずw」とも。
ロシア勢が不在の中、アイスダンスの新たな歴史を刻めるか。ソーラン節や琴の音色が流れる「和」のリズムダンスと、フリーのバレエ「ラ・バヤデール」が奏でる2人の世界観。「かなだい」ペアが世界選手権で大きな一歩を踏み出す。
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