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宇野昌磨、アイスショーで示した「世界一」背負わない来季への決意

2022 4/14 06:00田村崇仁
宇野昌磨,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

目標はネイサン・チェン

心技体が充実したシーズンを締めくくるアイスショーで来季への決意が表れた。

北京冬季五輪のフィギュアスケート男子シングルで銅メダル、世界選手権(フランス・モンペリエ)で悲願の初優勝を遂げた24歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)が4月2日、大阪府の東和薬品ラクタブドームで行われたアイスショー「スターズ・オン・アイス」に出演し、公式戦とは違うリラックスした凱旋演技で伸びやかなスケーティングを見せて観客を魅了した。

昨季のショートプログラム(SP)曲である「グレート・スピリット」のアップテンポなビートに合わせ、4回転トーループやトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を美しく着氷。代名詞でもある華麗なクリムキンイーグルも披露した。

公開された中継局の記者会見では来季への抱負を問われ「五輪3位、世界選手権優勝を背負っている演技ではなく、今年からシニアに上がるような気持ちで、新たにどんどん挑戦していくという演技を見せたい」とゼロから再出発する新たな決意を表明。

アイスショーで来日した北京冬季五輪金メダルのネイサン・チェン(米国)に「世界選手権優勝おめでとう」と祝福されたという喜びを素直に振り返り「長い時間をかけて、ネイサン選手のようなスケーターになりたい」と目を輝かせて目標を語る場面もあった。

食生活改善で体重も管理

今季は4種類計5度の4回転ジャンプを跳ぶ自身「最高難度」のフリー「ボレロ」を大切に育ててきた。心身とも限界まで挑戦し、引き締まった肉体がそれを物語る。公式戦は世界選手権で見納めとなったが、躍進の裏ではやや偏っていた食生活も見直して体重管理にも力を注いできたという。

「僕自身、体重がそんなにジャンプに影響することはないけど、6年ぐらい前のシニア初めてのシーズンの時と照らし合わせても今の体重は3キロぐらい重い。1年前ぐらいはもっと太っていた」と体重を意識した経緯を会見で明かしている。「主に飲み物」を注意しながら体重を絞り込み、今季の飛躍につなげたようだ。

宮原知子ら同世代が引退も現役へこだわり

五輪シーズンを終え、同世代の宮原知子(木下グループ)らが現役引退を表明し、時代の流れも実感している。

「僕はスケート界の中でしか生きてこなかったので、スケート以外の社会に出ることが自分ではまだ考えられない。一人で自立することにまだ覚悟を持てていない」との思い吐露した。その上で自身の将来について「僕はまだ続けたいと思っている。テレビを偶然つけたら、まだスケートしてるのかよ!って言われるくらい続けられたらなって、今、考えています」とユニークな宇野らしい表現で現役へのこだわりを口にした。

世界歴代3位の合計312.48点で初優勝した世界選手権では、尊敬する元世界選手権王者でコーチのステファン・ランビエル氏と抱き合った。今はフィギュアへの情熱と競技を楽しむ余裕が生まれている。

3年前、8位と惨敗したフランス杯ではかつてないどん底に突き落とされたが、不在だったコーチの役目を引き受けてくれた救世主がランビエル氏だった。恩師にさらなる進化した姿を見せたい思いも強いのだろう。

「今季は自分の中でも満足いく結果。でも特に人生観が変わったわけではない。五輪シーズンでも、どんなシーズンでも、自分ができるものをしっかり出し切っていこう、とやった結果、うまくかみ合ったシーズンだった」と振り返る。4年後のミラノ・コルティナダンペッツォ大会も見据え、向上心はまだまだ尽きない。

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