新演目「Gravity」はランビエル氏が振り付け
2月の北京冬季五輪フィギュアスケート男子シングルと団体で銅メダル、3月の世界選手権(フランス・モンペリエ)で悲願の初優勝を遂げた24歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)が、さらなる「進化」を期す来季に向け新たな一歩を踏み出した。
4月29日、横浜市のコーセー新横浜スケートセンターで行われたアイスショー「プリンスアイスワールド」にゲスト出演し、来季のショートプログラム(SP)を初披露。米国の人気ギタリストで親日家としても知られるジョン・メイヤーが歌う新演目「Gravity(グラビティ=重力)」はどこか哀愁が漂うエレキギターが印象的な落ち着いた楽曲で、全身を使って表現力豊かにクールに滑りきった。
強固な師弟関係を築く元世界王者のコーチ、ステファン・ランビエル氏が、多忙な合間を縫って実施したスイス合宿で振り付けを担当したという。今季のSP曲である「オーボエ協奏曲」は荘厳な音色が特徴的だったが、SPのテーマづくりはタッグを組むランビエル氏と2人で今後決め、強弱のある曲調をメリハリの効いた演技で表現する完成形を目指すようだ。
アイスショーではジャケット風の衣装でメイヤーの人気曲に合わせ、4回転トーループや3回転サルコーを鮮やかに決めると、両脚を180度開いて上体を反らせて滑る代名詞でもある華麗な「クリムキンイーグル」でも観客を沸かせた。
最高難度「ボレロ」の完成形を超えるシーズンに
4月26日には愛知・豊田市役所を訪れ、所属先や練習場がある同市のスポーツ栄誉賞を受賞。市長から花束、議長から豊田市産の苺が手渡された。地元メディアによると、宇野は「自分でこうしたいと思ったことをすべてこなせた。今までスケートをやってきた中で、一番濃いシーズンになった」と今季を振り返り「自分が挑戦し続けているときが一番成長していると思うので、もっともっと上を目指していきたい」と決意を新たにした。
オフもアイスショーの準備や表彰などに追われ、休む間もなく、7月からの新シーズンへ動いている。今季は4種類、計5度の4回転ジャンプを跳ぶ自身「最高難度」のフリー「ボレロ」を大切に育て、世界選手権で一つの完成形に到達した。来季も今季と同じ難易度の構成ではなく、新たな挑戦となるようなプログラムで試合に挑む決意だ。
目標とする選手はネイサン・チェン
宇野は以前、中継局の記者会見で来季への抱負を問われ「五輪3位、世界選手権優勝を背負っている演技ではなく、今年からシニアに上がるような気持ちで」と世界一の重圧を感じず、ゼロからの再出発を誓っている。
挑戦者の気持ちでいられるのは、最近目標としてよく口にする北京冬季五輪男子シングル金メダルのネイサン・チェン(米国)の存在が大きい。「長い時間をかけて、ネイサン選手のようなスケーターになりたい」とも語っており、どん底期からランビエル氏とはい上がった成功体験が支えになっている。
来季も新たなプログラムに魂を込めて打ち込むことでスケートの喜びを感じ、試合で課題を見つけながら完成形を目指す作業に自らの進化を期待している部分もあるのだろう。宇野は立ち止まることなく、技術、表現面でさらなる高みを目指す。
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