ウクライナ侵攻で問題長期化、勢力図一変か
花形競技のフィギュアスケートは北京冬季五輪でロシアの新星カミラ・ワリエワを巡るドーピング疑惑で大きく揺れた。
五輪閉幕後はロシアのウクライナ侵攻で、スポーツ界からロシアと同盟国ベラルーシが締め出される事態に泥沼化。4月26日に16歳となるワリエワをはじめ、北京冬季五輪で金メダルのアンナ・シェルバコワ、銀メダルのアレクサンドラ・トルソワらトップ選手がいつ国際大会に戻ってくるのか見通しも立たない。問題は長期化の様相を呈しており、勢力図が一変しそうな気配も漂う。
タラソワ氏やプルシェンコ氏ら除外に反発
国際オリンピック委員会(IOC)が競技団体に求めた除外勧告を受け、国際スケート連盟(ISU)は3月1日にウクライナに侵攻したロシアの選手や役員について、国際大会から無期限の除外を決めた。
3月の世界選手権(フランス・モンペリエ)からもロシア勢は排除された形だが、フィギュアでは女子が冬季五輪で3大会連続金メダルを獲得するなどロシア勢が大国として知られる。
こうした動きにフィギュアの名伯楽、タチアナ・タラソワ氏は地元メディアに「世界選手権はロシア勢がいないと、エンターテインメント性が損なわれる」と反発。2006年トリノ五輪王者のエフゲニー・プルシェンコ氏は「差別であり、スポーツマンの権利の愚かな侵害だ」と自身のSNSで批判した。ロシアのメディアも世界選手権を「二流の大会」などと皮肉り、スポーツ界でも分断が広がっている。
窮地に陥るロシア勢、ワリエワ騒動の行方も暗い影
国際社会で激しく非難されているウクライナへの軍事侵攻で停戦の行方が見通せない中、来季に向けてロシア勢は窮地に追い込まれ、その扱いに焦点が集まっている。
6月のISU総会ではフィギュアで五輪や世界選手権などに参加できる年齢について、17歳に引き上げる案を諮る方向で調整しているという。年齢制限は低年齢の選手への過度な身体的負担などを理由に、各国際競技連盟の判断で設けており、現在のISU規定では15歳以上となっているが、これに対してロシア勢が反対する可能性もある。
さらに世界が注目したワリエワ騒動は、指導するエテリ・トゥトベリーゼ・コーチの動きも含めて今後の展開が見えてこない。
ワリエワは北京五輪団体で1位に貢献した後、2021年12月の検査で禁止薬物に陽性反応を示したことが判明。16歳未満が「要保護者」に該当する状況などを理由に個人種目の出場を認められたが、ミスを連発して暫定4位に終わった。
五輪後、自身のSNSでファンや家族にお礼を述べた上で「永遠に感謝です。私はこれを忘れません。感謝の気持ちを持ちながらこれから滑りたいと思います」と現役続行への思いをつづった。3月下旬、ロシアのサランスクで行われた国内大会で団体戦の女子フリーに出場したが、ドーピングの処分を含めて今後の競技人生はどうなるのか先行きは見えない。
暗い影を落とすワリエワ騒動と戦争という2つの重いテーマは、フィギュア界の将来にも大きな禍根と影響を及ぼしそうだ。
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