余裕のある着氷とジャンプの質で出来栄え点荒稼ぎ
フィギュアスケート男子の18歳、高校3年生の鍵山優真(オリエンタルバイオ・星槎)は、まだあどけなさが残る顔とは裏腹にデビュー戦となった北京冬季五輪で強心臓ぶりを見せつけた。
2月8日の男子ショートプログラム(SP)は「うれしく、楽しく、自分らしいプログラム」との言葉通り、ノリノリの音楽と調和した勢いに乗った演技が光り、4回転ジャンプを2度着氷させるなど自己ベストの108.12点をマークして2位発進。2月10日の男子フリーではミスがあったものの、2種類計3度の4回転ジャンプを決めるなど201.93点を出し、自己ベストの合計310.05点で銀メダルに輝いた。
採点表を分析すると、鍵山は余裕を持って着氷できるジャンプの質が高く、出来栄え点(GOE)で大きな加点を得ているのが大きい。
SPでは冒頭の4回転サルコーで4.02点のGOEを引き出し、9人のジャッジのうち、2人が最高評価の「5」をつける圧巻の内容。4回転―3回転の2連続トーループは3.94点、基礎点が1.1倍になる後半のトリプルアクセル(3回転半)も滑らかな着氷で2.86点とそれぞれ加点され、最高難度レベル4のスピン、ステップも合わせて15.71点と荒稼ぎした。
フリーでも20点近く引き出した出来栄え点
団体で銅メダルに貢献した勢いそのままだった。男子フリーでは映画「グラディエーター」の音楽に乗り、冒頭の4回転サルコーで4.43点の加点。ジャッジ9人のうち、5人が5点満点の評価を出した。
続く4回転ループでは回転不足となり、着氷で手をついた。GOEはマイナス4.65点。それでも引きずらない。伸びのある天性のスケーティング技術や曲に合わせて感情豊かに踊れる才能もアピールし、残る5本のジャンプは全て成功した。
最後のトリプルアクセルを決めると、小さくガッツポーズ。スピンなど12要素を合計した技術点では出来栄え点だけで20点近くもGOEの加点を引き出した。
ジャッジが主観的に採点する演技点も5項目で全て9点台を並べ、初出場ながらネイサン・チェン(米国)と比較して遜色ないほど高評価を得た。フィギュア界に新風を吹き込んだホープの躍進は、海外からも「ワンダフルボーイ」と反響を呼んだ。
心強い父の存在、歌手MISIAさんもエール
コーチは1992年アルベールビル、1994年リレハンメル両冬季五輪に2度出場した父・正和さん。今大会も隣で見守ってくれる存在がいたのは心強かっただろう。
2020年冬季ユース五輪を制し、シニアに本格的にデビューした昨季は世界選手権2位と躍進。161センチと小柄ながら、ジャンプの質と表現力を合わせた総合力の高さで世界のトップ集団に仲間入りした。勢いだけではなく、将来性豊かな底力を感じさせる。
歌手MISIAさんも鍵山にエキシビジョン曲「明日へ」を楽曲提供した関係もあり、SNSで「結果が出た時にお父様とグッと手を握られていて、思わずテレビの画面を写真に撮りました。今一度、心より、おめでとうございます」と祝福のコメント。
2年連続でNHK紅白歌合戦の大トリを務め、中国でも高い人気を誇るシンガーの名曲の調べに乗って、大会の上位選手らが出演する2月20日の北京五輪閉幕日のエキシビションでも感謝を込めた演技を披露する予定だ。
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