世界選手権3位相当の高スコアで優勝
フィギュアスケート男子の2010年バンクーバー冬季五輪銅メダリストでアイスダンスへ転向して2シーズン目に入った35歳の高橋大輔と、28歳の村元哉中組(関大KFSC)が9月4日、米フロリダ州で行われた「レイバー・デイ・インビテーショナル」に出場し、22年北京冬季五輪に向けたシーズン初戦を優勝で幸先よくスタートした。
3日のリズムダンス(RD)で1位の84.74点をたたき出し、4日のフリーでも1位の129.70点をマークして合計214.44点。国際スケート連盟(ISU)非公認大会で、他の国際大会と単純比較はできないが、2020年12月の全日本選手権が合計151.86点で2位だったことを考えると、スコア自体は大幅アップで成長を証明。21年3月の世界選手権(ストックホルム)では「銅メダル」相当の高得点となった。
「ソーラン節」で息の合ったツイズル、課題リフトはレベル4
北京五輪出場を目指す今季初戦のRDでは新プログラム「Soran Bushi&Koto」(ソーラン節と琴)を披露。前半のソーラン節からヒップホップ調に移り変わる「和風ヒップホップ」に合わせる難しい演技構成だが、息の合ったツイズルや華麗なステップで独自の世界観を見せた。
「ヤーレンソーランソーラン」という日本人なら馴染み深い歌声に乗って、肉体改造で着実にパワーアップする高橋が村元を持ち上げて回転するリフトは最高のレベル4を獲得。スケート技術や音楽の解釈、パフォーマンスなど表現力を評価する演技構成点は全5項目で10点満点の9点台を軒並みそろえた。
磨きがかかったフリー「ラ・バヤデール」
フリーは昨季から継続の「ラ・バヤデール」。有名なクラシックバレエの音楽を使用したプログラムだが、幻想的な世界を表現した演技を終えると、互いにうなずき合いながら細部を意見交換する向上心と探究心が印象的だった。
一つ一つの動きや要素のつなぎは昨年以上に磨きがかかり、課題とされたリフトでも滑らかな動きでレベルアップした形を披露した。多回転の片足ターン「シンクロナイズド・ツイズル」はともにレベル4。曲の解釈では10点を与えるジャッジもいた。
1年目は「課題しかない」と苦笑いすることもあった高橋のゆとりを持った安定したサポートが村元の動きの美しさや華やかさをさらに引き立て、氷上の社交ダンスと呼ばれるアイスダンスならではの2人の世界観を醸し出している印象だ。
勝負のシーズン
アイスダンスは1976年インスブルック大会から五輪の正式種目になって、日本勢の最高位は2006年トリノ五輪の渡辺心、木戸章之組と、2018年平昌の村元哉中、クリス・リード組の15位。メダルを獲得したペアはいない。
カップル結成から、まだ2年。コロナ禍で試行錯誤しながら、五輪チャンピオンを育てたマリナ・ズエワ氏の指導を基礎から受け、アイスダンス特有の足先まで意識した美しさを磨いて「かなだい旋風」を世界に起こそうとしている。
今季はグランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯(11月12~14日、東京・国立代々木競技場)に出場を予定。2人の目標は全日本選手権で表彰台の真ん中に立つことだ。
約半年後に迫った北京冬季五輪の日本勢の出場枠は1のみ。シーズン初戦の収穫と新たな課題を胸に刻み、五輪シーズンの厳しい戦いがいよいよ始まった。
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