後半はヒップホップ調のスピード感
フィギュアスケート男子の2010年バンクーバー冬季五輪銅メダリストでアイスダンスへ転向した35歳の高橋大輔(関大KFSC)が、伝統のテーストを入れたリズムダンス(RD)の新プログラム「Soran Bushi&Koto」で北京冬季五輪シーズンに挑むことになった。
昨季からカップルを組む28歳の村元哉中とともに6月14日、双方の公式サイトで公表し、振り付けはマリナ・ズエワ、イリヤ・トカチェンコ、矢内康洋の3氏が担当。現代風にアレンジしたソーラン節のほか、後半にはヒップホップ調のスピード感を組み込んでいる内容の一端を説明した。
昨季は映画「マスク」のコミカルな世界観を表現したが、ひと味違う和風ナンバーに変更。高橋は「今シーズンのリズムダンスは和をテーマにしたプログラムになりました。ブルースの部分は日本の伝統曲でもある、ソーラン節です!35歳にしてまたこんな(テンポの速い)踊りをするとは…思ってなかったです! 年齢忘れて頑張ります!」と意欲を新たにした。
村元は「和楽器を使用したモダンなアレンジで、少し浮世絵の世界を想像していただきながらプログラムを楽しんで頂けたらと思います。見どころ満載のとってもユニークなプログラムになっているので、お楽しみに!」とつづっている。
ソーラン節を現代風にアレンジ
村元、高橋組は初挑戦となった2020年12月の全日本選手権では小松原美里、尊組(倉敷FSC)に次ぐ2位。「表彰台の真ん中」に目標を定め、国内トップカップルの背中を追う。
「ソーラン節」といえば、北海道の日本海沿岸の民謡。ニシン漁の歌として有名だ。
高橋は「ソーラン節?!とビックリする方もいらっしゃると思いますが、現代風にアレンジされていてとてもカッコいいものになっていて、それがまたスケートのスピード感と合う!後半の部分はジャンルとしてはヒップホップになります!こちらも、またガラッと雰囲気が変わりますが、日本らしさを取り入れて、これまたカッコいいものに仕上がったと思います!ただ、めちゃくちゃ早いので本当にしんどい!」とコメント。「世界一」と評される華麗なステップやエッジワークが氷上で新プログラムに彩りを添えそうだ。
フリーは「ラ・バヤデール」継続、五輪へ新たな世界観
フリーダンス(FD)は昨季に続き「ラ・バヤデール」を演じることになり、高橋は「さらにパワーアップした『ラ・バヤデール』をお届けします!ぜひお楽しみに!」とサイトで呼び掛けた。
村元は「このプログラムはまだ試合で2回しか滑っていないのと、まだまだブラッシュアップできるプログラムなので、さらに進化したラ・バヤデールの幻想的な世界を大ちゃんと二人で皆様の前でまた表現できる事を心から楽しみにしています。新シーズンに向けて1つ1つ目標をクリアしていけるように頑張ります!」と心境を語った。
北京五輪へ勝負の新シーズン。カップル結成から、まだ1年半。コロナ禍で試行錯誤しながら、五輪チャンピオンを育てたマリナ・ズエワ氏の指導を基礎から受け、アイスダンス特有の足先まで意識した美しさを磨いて「世界に新しい風」を起こそうとしている。
アイスダンスは1976年インスブルック大会から五輪の正式種目になって、日本勢の最高位は2006年トリノ五輪の渡辺心、木戸章之組と、2018年平昌の村元哉中、クリス・リード組の15位。メダルを獲得したペアはいない。
「未知の世界」へと挑む探究心と高揚感を胸に秘め、高橋はアイスダンスのリフトに必要な肉体改造と表現力の向上にも努力を惜しまない。2人で表現する新たな世界観。その先に北京五輪への夢は広がっている。
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