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35歳・高橋大輔が北京冬季五輪へ挑むアイスダンスの魅力と歴史

2021 4/19 06:00田村崇仁
高橋大輔Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

英国生まれの「氷上の社交ダンス」

フィギュアスケート男子で2010年バンクーバー冬季五輪銅メダリストの高橋大輔(関大KFSC)が、2022北京冬季五輪を見据えて転向したアイスダンスが注目されている。

社交ダンスの本場・英国で生まれ、1952年世界選手権(パリ)で初開催され、1976年インスブルック大会から冬季五輪の正式種目になって約半世紀。「氷上の社交ダンス」とも呼ばれ、男女2人で音楽に合わせた小刻みなターンやステップ、リフトで表現力や同調性などを競うのが大きな魅力だ。

同じく男女で滑るカップル種目の「ペア」と違ってダイナミックなジャンプなどの要素はなく、踊りの世界観や滑りの質、音楽との調和そのものがより重要となる。アイスダンスのルールや歴史を振り返ると、高橋が挑む世界の奥深さが見えてくる。

公式戦デビューは3位、全日本で2位

3月16日で35歳となった高橋は、村元哉中(関大KFSC)とカップルを組んで2020年11月のNHK杯でアイスダンスの公式戦デビューを飾り、出場3組中3位。2020年12月下旬の全日本選手権は5組による争いとなり、合計151.86点で2位に入った。

全日本のリズムダンス(RD)は前日の公式練習で左脚を負傷した村元のアクシデントを乗り越え、映画「マスク」のアップテンポな音楽に乗せて2位。逆転を狙ったフリーは中盤のリフトでバランスを崩して氷上に手をついたのが転倒扱いとなり、ステップやツイズルでも課題を残して3位だったが、愛を踊る古典バレエ『ラ・バヤデール』の世界観を幻想的なダンスで演じきった。

それでもコンビ結成1季目で上々の船出といえるだろう。2021年は全日本選手権で優勝を最大の目標に掲げ、さらなる飛躍を誓う。

2人の調和を求められるリフトやツイズル

アイスダンスはシーズンごとに課題のリズムやテーマが定められたリズムダンス(RD)=2分50秒±10秒=と、音楽を自由に選ぶフリーダンス(FD)=4分±10秒=の合計点で争われる。RDには決まったステップで滑りの質を競う「パターンダンス」という要素もあり、2人の美しさと調和が試されるのが特徴だ。

「世界一」と呼ばれる華麗なステップを武器とする高橋にアイスダンスで新たに求められるのは、異性のパートナーを持ち上げるリフト。「滑ること以外は何もかも違う」と本人も言う通り、体の鍛え方も変わってくる。靴も違うし、ターンやエッジの使い方も違う。

2人で呼吸を合わせるスケーティング技術や芸術性も難度はさらに高く、世界との力の差が出やすいといわれる。カップルで一定の距離を保ちながら回転する「ツイズル」は、シングルとはまた違った醍醐味がある。

サラエボ五輪で快挙、伝説の「オール満点」

アイスダンスの歴史で多くのファンの記憶に刻まれるのは、1984年サラエボ冬季五輪で人気を集めた英国のジェーン・トービル、クリストファー・ディーン組の演技だろう。

2人はラベル作曲の「ボレロ」の旋律に乗って愛の世界を描いた。9人の審判は芸術点で全員満点の6点を与え、五輪史上初の快挙で金メダル。スロー、クイック、スローとテンポの違う複数の曲を使うのが当時の常識だったアイスダンスを単調なボレロ1曲で演じきり、幻想的な愛のドラマに変えた「氷上の芸術」だった。

過去の五輪は15位が日本勢最高

アイスダンスは日本で競技人口がまだ少なく、スケートリンクなど競技を取り巻く環境も厳しいが、欧米では高い人気を誇る。競技レベルもロシアを中心とした欧米勢の壁が高く、日本勢は2006年トリノ冬季五輪で渡辺心、木戸章之組、2018年平昌冬季五輪で村元哉中、クリス・リード組が15位に入ったのが過去最高成績だ。それでも高橋大輔の新たな挑戦により、競技人口やファンを増やす可能性も膨らんでいる。

3月に行われたフィギュアスケートの世界選手権(ストックホルム)ではアイスダンスの全日本覇者、小松原美里、小松原尊組(倉敷FSC)が合計167.81点で自己最高19位に入り、日本に北京冬季五輪の出場枠を1枠もたらした。

2014年ソチ冬季五輪からフィギュアスケートは、男女シングルとペア、そしてアイスダンスで競う団体戦が正式種目に採用されたこともあり、日本でも若手のトライアウトを実施するなど本格的な強化に乗り出している。

息の合った2人の動きと、音楽と調和する「氷上の社交ダンス」と呼ばれる世界。今後は日本でもさらにアイスダンスの奥深さと魅力に注目が集まりそうだ。

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