全日本デビューはアクシデント乗り越え2位
フィギュアスケートのアイスダンスに今季転向した2010年バンクーバー冬季五輪男子銅メダリスト、34歳の高橋大輔(関大KFSC)が「見えてきた強みと新たな課題」を受け止めて2021年をスタートさせた。
ペアを結成した27歳の村元哉中とともに初出場した2020年12月の全日本選手権(長野市ビッグハット)は合計151.86点で2位。大会期間中に村元が公式練習で左膝を負傷するアクシンデントにも見舞われながら、2人で乗り越えて表彰台に立った。
「氷上の社交ダンス」と呼ばれるアイスダンスで華やかに全日本デビューを飾った一方で、2人の「スピード感や表現力」での収穫を得たのと同時に、アイスダンス特有のリフトやツイズルで課題も突きつけられた大会となった。
日本スケート連盟の公式ツイッター動画にも登場して新年の決意を表明し、村元は「2021年の目標は全日本チャンピオンになることです」と目標を掲げ、高橋も「同じく、全日本チャンピオンになることを目標に頑張ります」とスッキリした表情で意気込んだ。小松原美里、小松原尊組(倉敷FSC)が175.23点で3連覇し、世界選手権代表に決まった。
リズムダンス「マスク」はNHK杯上回る好内容
アイスダンスのリズムダンス(RD)は映画「マスク」のアップテンポな音楽に乗せ、華やかさとスピード感あふれる魂を込めた演目だった。約5時間前の公式練習中にステップの調整をしていた両者の脚がぶつかり、村元の上に高橋が覆いかぶさるように転倒。村元が左脚を負傷した不安を抱えながら、演技をやりきると、万雷の拍手の中で2人は抱き合った。
デビュー戦となった2020年11月のNHKを3.68点上回る好内容で2位発進。村元は痛み止めの薬を服用し、左脚にテーピングを施して出場したが、けがの影響を感じさせない滑らかな演技で会場を沸かせた。
NHK杯では経験者の村元が高橋を引っ張るような部分が見えたものの、全日本では高橋が積極的にリード。2人同時に連続でターンする見せ場のツイズルは2人とも最高のレベル4。パートナーを持ち上げて回転するリフトもレベル4をマークするなど着実な成長の跡をアピールした。
フリーは課題のリフトやツイズルでミス
一方、RD2位からの逆転を狙ったフリーでは前日の負傷アクシデントが尾を引いてよもやのミスが相次ぎ、順位を上げられなかった。それでも決して万全とは言えない状態の中で古典バレエの名作「ラ・バヤデール」の世界観を演じきった。
歯車が狂ったのは演技中盤の「ステーショナリー・リフト」。回転しながら村元を持ち上げ、氷上に戻そうとした高橋の体勢が崩れ、手をついたのが転倒扱いになった。
その後のツイズルでもバランスを崩すなどミスが重なり、技術点は43.81点、演技構成点は41.22点で、減点が1点あった。
「攻める演技」をテーマに掲げた転向2戦目。演技直後のテレビインタビューで高橋は「自分がミスして演技でサポートしてあげられなかった」と悔しさをにじませながら「こういう状態でも無事乗り切れたのはよかった。ミスがあった中でも改善点はたくさんあった」と収穫点も挙げた。
絆深まった「中身の濃い1年」
3組中3位だったNHK杯から一歩前進し、コンビ結成1季目での2位は上出来といっていい結果だろう。あくまで2人の目標は2022年北京冬季五輪。今回の全日本で負けん気に火が付いた高橋はテレビインタビューで「体感では3年ぐらいやっているぐらい中身の濃い1年」とも振り返った。
シングルとの比較を問われると「2人で合わせていかないといけない大変さもある。それでも違う醍醐味があって楽しい」と笑顔で前向きにコメントした。
新型コロナウイルス禍が世界で猛威を振るい、アイスダンスに挑戦した1シーズンで2回しか公式試合ができてないという異例の事態。そんな苦境でも2人で試行錯誤を重ねて練習に取り組み、パートナーとしての「信頼と絆」を深めてきたという。
高橋は言う。「自分たちはスピード感が強み。それを本番で出せるように」。課題となる「リフトの強化」も積極的に取り組んでいく考えを示した。
最大の目標は「全日本チャンピオン」の先にある北京五輪。古典バレエの名作「ラ・バヤデール」は主人公のソロルが死んだ恋人と幻覚の中で踊るというロマンティックなシーンが見どころだ。再出発となる2021年は互いの強みをもっと探りながら、観客の心に響き合うダンスの完成度を高めていく。
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