最高栄誉「マイヨジョーヌ」争いはヴィンゲゴーとポガチャルの一騎打ちか
世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」(略してツール)の2022年大会は、3週目へと突入。ここまでの2週間では、北欧初開催となったデンマーク・コペンハーゲンを皮切りに、ベルギー、スイスにも入国しながらフランス各地をめぐってきた。そして、戦いは最後の1週間。7月24日には、パリ・シャンゼリゼで2022年大会の覇者が決まる。
大会第1週はデンマークで3ステージ(ステージ=レース、1日1ステージを行う)を行い、移動日を1日設けたのちに本来の舞台であるフランスへ。同国北部からベルギーにまたがる地域特有の道路「パヴェ」(石畳の生活道路)を走り、隣国ベルギーにも進出。その後は南下して、途中でこれまた隣国のスイスに寄り道。続く第2週では、アルプス山脈へと足を踏み入れ、標高2000m級の山々を越えた。
全21ステージで争われる戦い。トータルの走行時間で競う最高栄誉の「個人総合時間賞」は、第2週までを終えた時点で昨年まで2連覇している23歳のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)と、前回大会2位のヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)による一騎打ちの様相を呈している。
個人総合優勝争いを展開中のヴィンゲゴー(左)とポガチャルⒸA.S.O.Pauline Ballet
ツールの戦い方を熟知し、いまや世界ナンバーワンのロードレーサーに成長したポガチャルは、大会第1週から手を抜かない姿勢を貫く。3週間に及ぶ長い戦いゆえ、得意とするコースレイアウト以外はリスクを負わず静かに走ることが鉄則とされるが、彼に限ってはコースの得手不得手関係なく勝ちに行く姿勢を崩さない。
大会初日・第1ステージの個人タイムトライアル(1人ずつ出走し、フィニッシュまでのタイムを競うレース)で3位と好スタートを切ると、第6ステージで早くも本領発揮。この日を勝って、早い段階で個人総合トップに躍り出た。翌日行われた第7ステージでは、20%を超える急勾配のグラベル(砂利道)でヴィンゲゴーとの競り合いに勝利。その後のステージではスプリント(フィニッシュ前のスピード勝負)に挑むなど、その攻撃的姿勢は観る者にインパクトを与え続けた。
しかし、そのポガチャルにもほころびが生じた。大会第2週に入り迎えた第11ステージ、アルプス山脈のグラノン峠で繰り出したヴィンゲゴーのアタック(一気にペースアップを図ってライバルとのタイム差拡大を図る攻撃)に対応できず、ずるずると失速。この峠の頂上に設けられたフィニッシュへ加速する一方のヴィンゲゴーに対し、ポガチャルは他選手にも次々とパスされ、この日だけで2分51秒遅れ。それまでの貯金をすべて吐き出し、レースリーダーの証であるジャージ(ウエア)「マイヨジョーヌ」をヴィンゲゴーに奪われたばかりか、総合タイム差2分22秒で追う立場となった。
第11ステージで勝利したヴィンゲゴーⒸA.S.O.Charly Lopez
25歳のヴィンゲゴーは、首位に立って以来危なげない走りでその座をキープしている。第2週最終日の第15ステージでは落車(転倒)に見舞われたものの、大きなダメージはなく、第3週も元気に出走。地元デンマーク開幕では大観衆の盛り上がりに涙を流したが、自転車熱の高い同国からの応援をバックにツール制覇を目指す。
ヴィンゲゴーが所属するオランダ籍のチーム「ユンボ・ヴィスマ」、ポガチャル擁するUAE(アラブ首長国連邦)籍の「UAEチームエミレーツ」は、ともに自転車ロードレースのトップシーンにおいて群を抜く戦力と選手層を有する。このツールでもそれぞれを支えるアシスト(チームリーダーを上位に送り込むために自身を犠牲にして働く選手)に実力・実績とも申し分ないメンバーをそろえており、ヴィンゲゴー対ポガチャルとしてだけでなく、チーム戦としての色合いも濃くなりつつある。
2強時代の突入を感じさせる今年の戦い。ヴィンゲゴーが最終目的地パリ・シャンゼリゼまでトップをキープできれば、ツール・ド・フランス初制覇。ポガチャルが勝てば3連覇となる。















第4ステージを制したワウト・ファンアールトⒸA.S.O.Pauline Ballet
マグナス・コルトⒸA.S.O.Pauline Ballet