「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

自転車ロードレースの「モニュメント」とは?全制覇わずか3人

2021 3/28 11:00福光俊介
ヤスパー・ストゥイヴェンⒸLaPresse
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸLaPresse

ワンデーレースとステージレースの違い

自転車ロードレースが活況を迎えている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いまだレース開催に至っていない地域も多いが、世界最高レベルのレースが行われる本場ヨーロッパは、ほぼ通常開催に戻った。

この時期、ロードレース界最高峰の大会が名を連ねるトップディビジョン「UCIワールドツアー」は、ワンデーレースを軸に注目度の高いレースが実施されている。

ワンデーレースとは、その名の通り「1日」で勝負が決まるレースのこと。対して、ツール・ド・フランスのような複数日にわたってレースを行って、最終的な所要時間を競うレースはステージレースと呼ぶ。

ワンデーレースとステージレースとでは、戦術や展開がまったくと言っていいほど異なる。一発勝負のワンデーレースは終始活発な駆け引きが繰り広げられる一方、ステージレースは個人総合優勝(期間中の合計タイムが最も短い選手)を狙う選手ほど長期的視野でレースを組み立てる。1週間のステージレースを例にとると、全7ステージ(期間中は1日1レースが基本)を終えた時点でトップに立っていれば良いのである。

選手個々に得手不得手があるのも興味深い。「ワンデースペシャリスト」と呼ばれるほどに、ワンデーレースに特化した実力者がいれば、かたや「ステージレーサー」と言われるような数日間の戦いで真価を発揮する選手もトップシーンには存在する。

北半球では春を迎えたいま、自転車ロードレース界の主役はワンデースペシャリストたちである。3月半ばから4月下旬までは、数日おきに主要ワンデーレースが開催される。そして、日替わりでスター選手が現れ、シーズンを華やかにするのである。

ワンデーレースの最高峰「モニュメント」

ワンデーレースの中でも、伝統と格式の高い大会は「クラシック」と呼ばれる。第1回開催が1890年代と古いものもあれば、1990年代に初開催された比較的新しい大会も含まれる。そのどれもが、開催地やコース難易度、選手・関係者・スポンサー・ファンなどからの人気といった要素を総合して、クラシックに位置づけられるようになった。

さらにクラシックのうち、とりわけ古い歴史を持ち、権威のある5つのレースを「モニュメント」と呼ぶ。これらのレースで勝利することは極めて価値の高いものとされ、1勝でも挙げられれば選手キャリアはもとより、生涯における大きな勲章となる。他競技で例えるならば、メジャーリーグのワールドチャンピオンや、サッカーの欧州チャンピオンズリーグ制覇に匹敵すると考えてもよいだろう。

自転車ロードレース「モニュメント」と呼ばれるレース


これらレースを1つとっても特徴はまったく異なる。ミラノ~サンレモは300km近い長距離。ロンド・ファン・フラーンデレンは急坂と石畳の路面。パリ~ルーベはレース距離約260km中50kmが握りこぶし大の石畳路面。リエージュ~バストーニュ~リエージュは絶え間なく連続するアップダウン。イル・ロンバルディアは山岳レースに匹敵するほどのタフな上り。共通点を挙げるとするならば、ロードレース界指折りの長距離(200km超)であることと、悪天候に見舞われた際の過酷さが尋常ではないあたり。

加えて、モニュメントにかける選手たちのモチベーションの高さもレースの激しさに拍車をかける。どんな実力者でも、一度は勝ちたいとの思いを抱いてスタートラインに並ぶ。自然とレーススピードは上がり、タフな駆け引きが繰り返される。やがて消耗戦となり、「真の強さ」を持つ者だけが最後まで生き残るのである。

それもあって、モニュメント全制覇を果たしている選手は、歴史上3人しか存在しない。現役選手では、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)が4大会で勝利を収めており、全制覇にリーチをかけているが、ミラノ~サンレモだけを残して足踏みを続けている。

今年のミラノ~サンレモはストゥイヴェンが優勝

2021年シーズンのモニュメント第1戦となるミラノ~サンレモが、現地3月20日に開催された。レース名の通り、イタリア・ミラノを出発し、同国北西部の町・サンレモを目指す。基本的にはレース中盤からリグリア海に沿ったルートが設定されるが、通過する自治体の意向などで毎年少しずつコースのマイナーチェンジが行われる。今年は299kmで争われた。

勝負が動くのは、フィニッシュ前9kmから上り始める丘「ポッジオ」なのは昔から変わらない。いわば、299kmのうち最後の10kmにすべてが集約されているといっても過言ではないのである。もちろん、今年もポッジオで優勝争いが激化。この丘越えでライバルを突き放す選手が現れるか、はたまた生き残った数人による争いになるのかが見ものなのだが、今回は決定打が生まれず17人がフィニッシュへとなだれ込む格好となった。

もつれにもつれた戦いは、28歳のヤスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が初優勝。同時に、モニュメントで初めて頂点に立った。このところはチーム事情もあり、アシスト(チームで最も実力のある選手の好成績のためにサポートに徹する選手)に回ることが多かったが、この日は勝負勘が冴えわたった。

そんな彼は、石畳を走るレースを最も得意としている。来るロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベでも、優勝争いに加わることが期待されている。

最後に、「この選手たちを覚えておけばワンデーレース観戦が楽しくなる!」というおすすめのライダーを挙げておきたい。今後のレースで彼らが活躍するか、または打ち負かす選手が現れるか。そんなワクワク感を抱きながら、自転車ロードレースの魅力に触れてほしい。

ワンデーレース注目選手

【関連記事】
自転車ロードレースの金銭事情、スポンサー頼みもトップ選手は年俸7億円超
ツール・ド・フランスに揃って出場も?自転車競技を牽引する日本人3選手
ロードレースのワールドツアー初戦に見るオフシーズン日数と成績の関連性

おすすめの記事