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ロードレースのワールドツアー初戦に見るオフシーズン日数と成績の関連性

2021 3/7 11:00福光俊介
タデイ・ポガチャルⒸLaPresse
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ⒸLaPresse

ツール・ド・フランス王者がUAEツアーで貫録勝ち

ツール・ド・フランス覇者としての風格がその走りには備わっていた。

2021年のサイクルロードレースシーズンが本格的に始まった。世界各地で開催されるレースは、大きく4つのカテゴリーに分けられ、その最高峰である「UCIワールドツアー」が2月21日から27日に行われたUAEツアーで幕を開けた。

この大会では、平坦・山岳・個人タイムトライアル(1人ずつ時間差で出走しタイムを競う種目)と、要素の異なるコースを7日間かけてレース仕様のロードバイクで走り、合計タイムを競った。その結果、昨年のツール・ド・フランスを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)が個人総合優勝を果たした。

ツール・ド・フランスといえば、オリンピックやFIFAワールドカップと並ぶ「世界三大スポーツイベント」に数えられる大規模イベント。それを制したということは、つまりはロードレース競技の頂点に君臨することを意味する。現役のツール王者は、UAEツアーで実力通りの結果を残した。

昨年10月のレース活動終了が今季好スタートのカギ?

順位だけ見ればポガチャルの順当勝ちといったところだが、実際は未知数の要素も多い大会だった。

というのも、例年1月中旬から10月中旬まで世界各地でレースが開催されるロードレースシーンだが、昨年は他競技同様に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、シーズンがイレギュラー化。自転車競技を統括するUCI(国際自転車競技連合)によって、3月下旬からレースシーンにおける一切の活動が停止された。

当初1カ月後をメドに再開される予定だったシーズン中断は7月まで延び、ワールドツアーに至っては8月にようやくリスタート。これにより、開催時期が中断期間と重なったレースの多くが8月以降に詰め込まれ、2020年シーズンが終わったのは、11月上旬。実に約1カ月、レース期間が延長される格好になった。

オフシーズンの選手たちは通常、2週間ほどバイク(自転車)に乗らない休養期間を経て、徐々にトレーニングを再開する。その後、チームごとに数回のビルディングキャンプ(強化合宿)を経て、次のシーズンへと向かう。しかし、大幅にスケジュールが変化している状況により、このオフはキャンプの簡素化・短縮化、選手によってはキャンプを回避して独自調整で現在に至っているケースもある。

そうした中で迎えた今季初戦のUAEツアー。総合上位陣は、どの程度オフを過ごせたのだろうか。

UAEツアー個人総合上位陣のオフシーズン日数


オフシーズン日数140日のポガチャルら4人は、いずれも10月上旬に昨季のレース活動を終了。オフの期間をしっかり摂って、UAEツアーでの好成績に結びつけている。

そのほかの選手たちも、大多数が10月下旬には昨季のレース活動を終えているが、例外だったのが今大会8位のマッティア・カッタネオ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)。昨年は11月の最終戦まで走っており、他の上位選手とは半月から1カ月ほどの短いオフでありながらも、上位進出を果たしている。

ただ、カッタネオのケースは例外中の例外。今回の結果からみれば、イレギュラー化した中でも、前年10月にはレース活動を終えて当年の開幕を迎えるという「本来のレース活動スタイル」をできる限り保っていた選手たちが今季のスタートダッシュに成功していると見て良さそうだ。

ポガチャルにはスポンサー都合で調整を急いでいた背景も

コロナ禍でも充実のオフを過ごし、今季初戦の勝利に結びつけたポガチャルだが、彼に限ってはもう1つ勝因が挙げられる。

サイクルロードレースのチーム名は、タイトルスポンサー企業の名をそのまま冠するのが特徴だが、彼が所属するUAE・チームエミレーツはその名の通りUAE(アラブ首長国連邦)が国を挙げて支援をしている。どのチームも、スポンサー企業の本拠国で開催されるレースへは優先度を高めており、ポガチャルたちにとってはこの大会がシーズンの中でもツール・ド・フランスに次ぐ重要レースであった。

そんな、優勝を義務付けられている大会だが、昨年は個人総合2位に終わっていた。「今年こそは」の強い意気込みで臨んでおり、他の有力選手と比較してもシーズンインへの調整を急いでいたことは本人も認めている。

1日で200km近い距離を走ることもあるサイクルロードレース。その競技特性上、フルシーズンで絶好調を維持することはどんな実力者でも難しい。実際に、ポガチャルは3月に開催されるUCIワールドツアー公認レースを数回走ったのち、いったん休養に入ることを明かしている。彼を追うライバル選手たちも、開幕直後とあってまだまだ100%の状態には仕上げていない。

いくつもの段階を経て、ライダーたちはツール・ド・フランスなどの目標とするレースへと向かっていく。サイクルロードレースシーズンが活況を迎えるのはこれからである。

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