1日4種目の過酷な競技で日本選手初V
自転車トラック種目の世界選手権で155センチと小柄な22歳の梶原悠未(筑波大)が快挙を達成し、東京五輪のニューヒロインに名乗りを上げた。1日で4種目を行い、総合成績で競う過酷な女子オムニアムで史上初の金メダルを獲得。世界選手権のオムニアムで日本選手が表彰台に立つこと自体も初めてだ。
オムニアムはラテン語で「全部」を意味する言葉が由来とされ、2012年ロンドン五輪から五輪種目に加わった。梶原は2017年にワールドカップ(W杯)で日本勢初の金メダルを獲得。今季はW杯第3戦の香港大会、第4戦のニュージーランド大会で2大会連続優勝を挙げた成長株だ。
2月28日、ベルリンで行われた五輪前哨戦は練習から考える訓練を怠らない「頭脳派ライダー」のスピード、パワー、持久力に戦略を兼ね備えた「超人技」を世界に印象付けた。日本自転車連盟の公式ツイッターで「すごく嬉しいです!!東京オリンピックでも金メダルを獲れるようにもっともっとトレーニングしていきます!」と喜びのコメントを寄せた。
最初の種目はスクラッチ
最初の種目スクラッチで梶原は1着と好スタートを切った。これは男子10キロ、女子7.5キロで一斉に選手がスタートし着順を競う方式。シンプルに先にフィニッシュした選手が勝つためトラックの個人ロードレースといったイメージだ。序盤から逃げる戦略もあるが、周囲との駆け引きや特にレース終盤の追い込みは目が離せない。
2種目目はテンポレース
続く2種目目のテンポレースで柏原は2着となり、総合首位で前半戦を終えた。スクラッチと同じ男子10キロ、女子7.5キロで行われ、周回ごとに先頭者のみに1ポイントが与えられる方式。先頭のみしか得点が入らないため、よりスピーディーなレース展開を楽しむことができる。仕掛けるタイミング、足を休めるタイミングの見極めが勝負どころとなる。
3種目目はエリミネーション
梶原は後半戦に入った第3種目のエリミネーションで苦境に立たされた。これは2周ごとに最下位の選手が脱落するサバイバル方式。最後の残り2人の勝敗は残り1周のレースでガチンコバトルとなる。
残り6人となったところで梶原は外に振られ、他選手と接触して落車。レース全体が一時中断するアクシデントが待っていたが、左腕の痛みをこらえて乗り越えて3着に食い込んだ。このレースでは集団の中での位置取りが重要となる。
最終種目はポイントレース
総合ポイント首位で迎えた梶原は、負傷した左腕にサポーターをしながら最終種目ポイントレースを全体8位で冷静に逃げ切った。
これは男子25キロ、女子20キロで中間ポイントを獲得しながら走る方式。10周ごとに1位5点、2位3点、3位2点、4位1点が加算され、最後は得点が倍になる。さらに周回遅れにすると20点加算できるが、追いつかれるとマイナス20点で勝敗を大きく左右する。
ライバルのポイントを計算しながら仕掛ける駆け引きにも注目。梶原は総合2位のイタリア選手の動きを徹底マークしながら、冷静にポイントを獲得する戦略の高さが光った。
日本勢33年ぶりのアルカンシェル
2位のイタリア、3位のポーランド選手を抑え、堂々の金メダル。世界選手権を制した日本勢は1987年オーストリア大会の本田晴美(ケイリン)俵信之(スプリント)以来33年ぶり。女子の世界選手権メダルは2015年フランス大会でポイントレース銀メダルの上野みなみ以来、史上2人目となった。
自転車の世界チャンピオンジャージ「マイヨ・アルカンシェル」を日本にもたらした梶原は自身のツイッターで「2月29日 誕生日の母に最高のプレゼントを渡せて幸せです。たくさんのサポート、応援ありがとうございます」と喜びをつづった。