1次リーグ突破の4強でトップの成功率83%
北京冬季五輪でカーリング女子日本代表「ロコ・ソラーレ」が前回大会の銅メダルを上回り、男女通じて過去最高の銀メダルの快挙を達成した。
決勝では英国に3―10で敗れたものの、準決勝で昨季の世界選手権女王のスイスを破る大金星。「氷上のチェス」と呼ばれる頭脳スポーツにはアイスの状況やストーンのチェック、戦術といった勝負を分けるさまざまな要素があるが、日本を銀メダルに導いたのは世界各国をしのぐ4人のショット成功率の高さにあった。
競技の特性上、チーム最後の一投を担うスキップ藤沢五月に注目が集まりがちだが、日本が数字の上でも優れていたのは4人の総合力。1次リーグを突破した段階で、4強の英国、スイス、スウェーデンとの比較で日本はショット成功率83%でトップの数字を残した。
準決勝のスイス戦、吉田夕梨花は驚異の99%
準決勝のスイス戦で日本のショット成功率は88%。スイスの81%を大きく上回った。リードの吉田夕梨花は20投を投げて驚異的な99%。相手のガードストーンをわずかにずらす難しい「ウィック」と呼ばれるショットを次々と決めるなど、勝利へつながる流れをチームにもたらした。
スキップの藤沢五月も準決勝は絶好調でチームをけん引。1次リーグでポジション別ショット成功率が最高だった実力を発揮し、89%と自己ベストの高い精度を見せた。1次リーグ首位通過したスイスを8―6で破り、初の決勝に進出した。
決勝の英国戦はショット成功率の差で敗北
一方、決勝の英国戦は快進撃を支えた日本のショット成功率が影を潜めたのが敗因だった。思い通りにストーンが曲がらないショットのミスも目立った。
サード、スキップのショット成功率を比較すると、英国が89%、88%だったのに対し、日本は64%、69%。サードの吉田知那美は大一番で成功率が64%にとどまり、スキップ藤沢五月も69%とショットの精度がわずかにずれた。英国に先に主導権を握られ、戦略的に理想の形をつくれなかったのも数字に表れたといえるだろう。
前回平昌大会の3位決定戦で戦った因縁の両チーム。英国のスキップ、ミュアヘッドは自身の最後の一投がわずかに狂って日本にメダルを譲った苦い記憶があった。だが今回は隙のないショットで日本を追い詰め、英国に今大会唯一の金メダルをもたらした。
競技発祥とされるスコットランド出身の31歳。4―2の第7エンドは自身の1投目に石を二つ同時にはじき出す「ダブルテークアウト」を鮮やかに決め、2投目は手前の英国の石に当てて奥にある日本の石を出した。一挙4得点で勝利を確実にした。
英国は平昌大会の3位決定戦で日本に負けた雪辱を果たし、2002年ソルトレークシティー五輪以来20年ぶり2度目の金メダル。4年の歳月を経て泣き笑いのドラマが凝縮された決勝でもあった。
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