武居由樹がクリスチャン・メディナに4回TKO負け
注目されたプロボクシングの4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチは井上尚弥(32=大橋)がムロジョン・アフマダリエフ(30=ウズベキスタン)に12回判定勝ちした。
一方、セミファイナルで行われたWBO世界バンタム級タイトルマッチは、武居由樹(29=大橋)がクリスチャン・メディナ(25=メキシコ)に4回TKO負け。3度目の防衛に失敗し、王座から陥落した。
武居は現役続行することを所属ジムの大橋秀行会長が明言したが、K-1から転向した武居同様、キックボクシングから転向し、世界挑戦間近の那須川天心(27=帝拳)との対決は遠のいた。天心は現在WBA、WBCでバンタム級1位にランクされており、王座を奪取すれば武居と王者同士の統一戦も期待されていたが、武居が敗れたため夢プランが実現するとしても当分先になりそうだ。
大橋会長はメディナ戦をクリアすれば天心戦を実現させたい意向を試合前から示唆していた。ただ、先のビッグマッチが決まっていたのにその前の試合で敗れてご破算になった例は、海外も含めてこれまで何度もあった。
何を言っても結果論になるが、天心戦がちらつく状況でメディナ戦への集中力を欠いた点はなかっただろうか。特に無敗の選手は勢いがある半面、無意識のうちに気の緩みが出る恐れも否定できない。
最後までアウトボクシングに徹した井上尚弥
その点、同じ無敗で、サウジアラビアで行う次戦、中谷潤人(27=M.T)と戦う来年まで予定が決まっている井上は、気の緩みなど微塵も感じさせない戦いぶりだった。
常に相手を過大評価して試合に臨むことは以前から明言しているが、アフマダリエフ戦はその姿勢を徹底。慎重に距離を取り、足を使い、クリーンヒットしても深追いはしない。明らかにポイントをリードしていた終盤に入っても倒しにいこうとはせず、見事にプラン通りの大差判定勝ちを収めた。
これは井上のメンタルの強さと、父・真吾トレーナーに全幅の信頼を置き、指示を忠実に実行するテクニックが備わっているからこそできる芸当だ。ポイントでリードした終盤に会場で「尚弥コール」が起これば、倒したい、ファンを喜ばせたいという色気が出ても不思議ではない。
しかし、もし攻め込んでいれば、井上が試合後に振り返ったように違った展開になっていたかもしれない。実際、最終回の終了間際、アフマダリエフの右フックを浴びた井上は一瞬ぐらついた。接近戦を挑んでいれば一発で形勢逆転されるリスクをはらんでいたことは間違いない。

ⒸLemino/SECOND CARRER/NAOKI FUKUDA
ディフェンス磨いて次こそ「夢の対決」を
武居は29歳と決して若くないが、まだ衰える年齢ではなく、ボクシングでは12戦(11勝9KO1敗)しかしていない。再起して地道にトレーニングを重ねていけば、いずれ王座に返り咲くチャンスが訪れるだろう。
現役時代、派手な打ち合いが多かったことから「激闘王」と呼ばれた八重樫東トレーナー同様、武居も以前からタフなファイトが多い。最終回にガス欠となったジェイソン・モロニー戦、ダウンを奪われた比嘉大吾戦などファンが喜ぶ“どつき合い”を演じてきたが、今後はやはりディフェンスを磨く必要がある。
謙虚で真っすぐな人柄でファンの多い武居。さらに一回りグレードアップし、今度こそ天心と夢の対決を実現してほしい。
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