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井上尚弥が意外にも「判定決着」を視野に入れる理由、ドヘニー戦あすゴング

2024 9/2 06:00SPAIA編集部
井上尚弥とドヘニー,ⒸLemino/SECOND CAREER
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ⒸLemino/SECOND CAREER

「KO、判定、どちらも準備しています」

プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)が9月3日に東京・有明アリーナで元IBF同級王者テレンス・ジョン・ドヘニー(37=アイルランド)との防衛戦に臨む。

8月31日には横浜市内で行われた会見に出席。その中で「判定決着になってもボクシングの魅力を伝えられると思ってるので、KO、判定、どちらも準備しています」との発言があった。

ドヘニーは元IBF王者で現在もWBO2位にランクされているものの、37歳という年齢もあり、井上の圧倒的有利と予想されている。モンスターが倒してきたスティーブン・フルトン(アメリカ)やルイス・ネリ(メキシコ)らの難敵に比べると嫌らしさもなく、焦点は何ラウンドにKOするかというのが大方の見方だ。

井上は試合のたびに相手を過大評価し、決して油断しないように自らを戒める。ドヘニーに最大限の敬意を示すのは理解できるとしても、「判定勝ち」もシミュレーションの中にあるのは意外だった。

ネリ戦で初のダウン「1ラウンドの入り方を考え直した」

その背景にあるのはネリ戦で喫した生涯初のダウンだ。1ラウンド、接近戦でネリの左フックをもらい、半回転するように倒れた。世界中が肝を冷やしたシーンだった。

井上は「あの1ラウンドがあったからこそ強くなれたし、ボクシングに対する向き合い方も変わった。感覚的に成長した、いい経験ができた1ラウンドだと捉えている」と説明。試合後にリング上で受けたインタビューでは「1ラウンドのサプライズ、たまにはいかがでしょうか」と興奮気味に振り返っていたが、一発で試合が終わる可能性もあるボクシングで、逆転KOは決して褒められた結果ではない。

冷静にネリ戦を振り返り、確実に勝ち続けていくためには慎重な戦い方も必要だと再認識したのだろう。ドヘニーも26勝(20KO)4敗と軽量級にしてはKO勝ちが多く、最近は3連続KOと勢いに乗っている。

不用意な被弾が命取りになる可能性もあるため無理に接近戦を挑むのではなく、余裕を持ってポイントを積み上げていき、その延長線上にKOがあるという展開を描いているのかもしれない。

「会場の雰囲気に呑まれたわけじゃないけど、気持ちも高ぶっていたし、気合も入っていたのでああいうシーンが訪れた。理想とする1ラウンド目の入り方を考え直して、父としっかり話ができている」と東京ドームの大舞台で少し自分を見失っていたことを明かした。

中盤から後半にKO勝ち?

実力差がある試合、楽勝ムードが漂う試合で最も怖いのは油断だ。一瞬の隙が大番狂わせにつながることはボクシングの長い歴史が証明している。

しかし、会見での井上の言葉を聞く限り、その心配はなさそうだ。ということはやはり、モンスターが“らしさ”を発揮してKO勝ちする可能性が高い。

ファンが喜ぶド派手な打ち合いではなく、今回は「打たせずに打つ」理想のボクシングで、中盤から後半にKOシーンが訪れるのではないか。たった1度のダウンで大きく成長するモンスターの“学習能力”を証明する試合となりそうだ。

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