「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ネリ撃沈の井上尚弥、次戦相手候補サム・グッドマン、アフマダリエフの実力は?

2024 5/7 06:00SPAIA編集部
サム・グッドマン,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

34年ぶり東京ドーム決戦でネリを6回TKO

プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)が6日、東京ドームで行われた防衛戦でルイス・ネリ(29=メキシコ)を6回TKOで下し、WBCとWBO王座は2度目、WBAとIBF王座は初防衛に成功した。

「東京ドームで日本人メインイベント。プレッシャーがあった」と正直に打ち明けた井上は、初回に接近戦でネリの左フックをもらってボクサー人生初のダウン。世界中が驚くシーンだったが、冷静にカウント8で立ち上がると2回から反撃に転じる。

2回に左フックでダウンを奪い返すと、5回に再び左フックで2度目のダウンを奪う。迎えた6回、ロープに吹っ飛ばす強烈なダウンで試合を決めた。

試合後のインタビューで「1ラウンドのサプライズ、たまにはいかがでしょうか」とドームを埋め尽くしたファンに質問したモンスター。「ボクサーなのでそういうシーンは燃え上がる。ハイテンションで試合をしてました」と高揚した口調で逆転KOを振り返った。

インタビューの途中でネリに握手を求め、「6年前に日本での因縁があったことは第2戦を会場で観戦していたので受け止めていた」とネリが日本のリングから永久追放された過去に触れた上で「自分はこの戦いに集中してきたので、勝った瞬間はネリに感謝という気持ちで握手を求めた」と笑顔を見せた。

さらにIBF・WBOスーパーバンタム級1位サム・グッドマン(25=オーストラリア)がリング上で紹介されると「9月頃、サム・グッドマンとの試合に向けてこれから交渉していきたい」と次戦の対戦相手候補であることを明かした。

IBF・WBO1位サム・グッドマン

WBC1位のネリを下し、次の相手候補に指名されたIBF・WBO1位のサム・グッドマン(25=オーストラリア)とはどんなボクサーなのだろうか。

2018年のプロデビューから18戦全勝(8KO)。2023年3月に、この日の井上尚弥のアンダーカードに登場したTJ・ドヘニー(アイルランド)に判定勝ち、同年6月にはIBFスーパーバンタム級挑戦者決定戦でライース・アリーム(アメリカ)に判定勝ちと次々に強豪を撃破した。

今年3月にはマーク・シュライブス(オーストラリア)を4回で倒し、6試合ぶりのノックアウトを記録している。

一発のパワーはないが、スピーディーな左ジャブを中心に組み立てる右ボクサー。井上が7回KO勝ちした、同じオーストラリアの前WBOバンタム級王者ジェイソン・モロニーと似たタイプで、ネリほどのやりにくさはない。対戦すればモンスターが負けるシーンは想像しにくい。

WBA1位ムロジョン・アフマダリエフ

お互いが対戦を希望しているため決裂する可能性は低いが、グッドマン戦の次も視野に入れれば、WBA1位にランクされるムロジョン・アフマダリエフ(29=ウズベキスタン)も相手候補の1人だ。昨年4月にマーロン・タパレスに判定負けした元WBA・IBFスーパーバンタム級王者。アフマダリエフを破ったタパレスを、井上が昨年12月に倒して4団体統一した経緯がある。

アフマダリエフは2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級で銅メダルを獲得。準決勝で敗れたロベイシ・ラミレス(30=キューバ)は昨年7月に清水聡に5回TKO勝ちした元WBOフェザー級王者(昨年12月に陥落)だ。

アフマダリエフは五輪後にプロ転向し、2018年3月に米ニューヨークでプロデビュー。アメリカを主戦場としてリングに上がり、2020年1月にはダニエル・ローマン(アメリカ)を判定で下してWBA・IBFスーパーバンタム級王座を獲得した。

2021年4月には日本の岩佐亮佑(セレス)に5回TKO勝ちするなど3度の防衛に成功。タパレスに敗れてベルトを失ったものの、昨年12月にはWBAスーパーバンタム級挑戦者決定戦として行われたケビン・ゴンザレス(メキシコ)戦に8回TKO勝ちで再起を果たしている。

戦績は11勝(8KO)1敗。身長166センチと井上とほぼ変わらないが、ガッチリした体格と太い腕っぷしでいかにも頑丈そうなサウスポーのボクサーファイターだ。

アマチュアで300戦以上しているだけあって、ガードが高く簡単にクリーンヒットは許さない。ボディーの的が小さいためボディーブローも当てづらく、攻勢に転じた時のラッシュにも迫力がある。

ただ、スピードはあまりなく、タパレスに敗れたことで商品価値も低下した。対戦が実現すれば、井上がじわじわとダメージを与えながら中盤以降にKOチャンスが訪れそうだ。

ジョンリエル・カシメロは脱落?

バンタム級王者時代から井上を挑発してきたジョンリエル・カシメロ(35=フィリピン)は、昨年5月のフィリップス・ンギーチュバ(ナミビア)戦でガス欠気味の判定勝ち、同10月の小國以載(角海老宝石)戦で4回負傷ドローに終わるなど精彩を欠いている。

現在もWBO4位、IBF9位、WBC10位など世界ランクには入っているが、井上の対戦相手としての優先順位は低いだろう。

井上は将来的なフェザー級転向を視野に入れるものの、しばらくはスーパーバンタム級にとどまって防衛を重ねる意向を示している。次戦は9月にサウジアラビアで開催との噂もあるモンスター。もはやスーパーバンタム級に敵はいないのではないだろうか。そう思わせるだけの強烈なKO劇だった。

【関連記事】
日本ボクシング界の歴代世界スーパーバンタム級王者団体別一覧、燦然と輝く西岡利晃のV7
ボクシング階級別世界王者一覧、日本選手未踏の階級は?
井上尚弥のKO完勝が「苦戦」に見えた理由、データで見るボクシング4団体統一戦