両国国技館でIBF王者マルティネスと2団体統一戦
プロボクシングのWBAスーパーフライ級王者・井岡一翔(35=志成)が7月7日に両国国技館でIBF同級王者フェルナンド・マルティネス(32=アルゼンチン)と2団体統一戦を行うことが4月22日、発表された。会見には両王者が出席。当日の試合は「ABEMA(アベマ)」格闘チャンネルで生中継される。
井岡はWBOスーパーフライ級王座を獲得して5度防衛後、当時WBA王者だったジョシュア・フランコ(アメリカ)との統一戦に臨むも引き分け。WBOから出た当時の同級1位・中谷潤人(M.T)との指名試合を蹴ってWBO王座を返上し、挑戦者としてフランコとの再戦に判定勝ちした。そのWBA王座を昨年大晦日に初防衛して、これが2度目の防衛戦でもある。
一方のマルティネスは2016年リオデジャネイロ五輪フライ級に出場して1回戦敗退後にプロ転向。2022年にIBFスーパーフライ級王座を9度防衛していたジェルウィン・アンカハス(フィリピン)を破ってベルトを奪取した。ここまで2度の防衛に成功しており、16戦全勝(9KO)と無敗を誇っている。
身長157センチと井岡より約8センチ低いがガッチリした体格で、前に出て距離を詰めながら戦う右ファイター。スタミナがあってタフなためやりにくい相手だが、一発のパワーはなく手数で勝負するタイプで、華麗なテクニックを持つ井岡とはかみ合いそうだ。
「打ち勝たないと止められない」
会見ではマルティネスが「彼に対して怖い気持ちはありません」と自信ありげに話すと、井岡も「印象としては特にないです」とお互いに余裕のコメント。
IBF王者が「血を呼ぶかもしれない」とラフファイトを予告すると、井岡も「打ち勝たないと(前進を)止められない。彼の得意とする距離で打ち勝って最終的にはKOできたらいいなと思っています」とKO宣言で応じた。
井岡は31勝(16KO)2敗1分の戦績が示す通り、ノックアウトが多いタイプではなく、テクニックで自分のペースに持ち込みながらチャンスがあれば倒すスタイル。それでも強気のKO宣言が飛び出した理由は、相手がファイターでカウンターを狙いやすそうな点と、前回のホスベル・ペレス(ベネズエラ)戦の見事な7回KO勝ちで自信を深めた点にある。
「前回の試合で積極的に攻める姿勢をパフォーマンスとして出すことができたし、自信にもつながりました。引き続き積極的に攻めて、倒し切りたい」と言い切った。
マルティネスの次はエストラーダ?
また、井岡はミニマム級からスーパーフライ級まで4階級制覇した中で、WBA、WBC、WBOのベルトは持っているものの、IBFだけ獲っていないこともモチベーションになっている。
2014年に3階級制覇をかけて挑んだIBFフライ級王者アムナット・ルエンロン(タイ)戦は12回判定負けでプロ初黒星だった。「唯一持ってないベルトなので、全てのメジャー団体のタイトルを揃えるという意味では獲りたい気持ちが強い」と静かな口調で燃える理由を説明する。
さらに、今回の一戦に勝てば、井岡が対戦を熱望しているWBC王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との統一戦への期待も膨らむ。WBAスーパーフライ級暫定王座にダビド・ヒメネス(コスタリカ)が就いたこともあり、井岡がマルティネスに勝ってもすぐにエストラーダ戦が実現するかは不透明だが、エストラーダは6月にWBC王座の防衛戦を予定しており、近い将来の対戦が実現する可能性もある。
「今はベルトに興味があるのではなく、選手に興味があります。誰と戦いたいか。この試合でベルトを2本獲ってエストラーダ選手と3団体統一戦ができたらいい。指名試合もありますが、そういった戦いを優先できれば」と強い相手を求める胸の内を明かした。
1983年七夕に世界挑戦した赤井英和
七夕決戦と言えば1983年7月7日のWBCスーパーライト級タイトルマッチが思い浮かぶ。
「浪速のロッキー」赤井英和が母校・近大記念会館で王者ブルース・カリーに挑み、「7月7日の7ラウンドにKOする」と予告した7回で壮絶に散った伝説の一戦だ。
あれから41年。赤井に憧れてグリーンツダジムに入門した井岡弘樹の甥っ子が、同じ七夕に統一戦に臨む。“彦星”井岡が“織姫”エストラーダへの気持ちを成就させるべく、マルティネスをKOするか。ボクシング界の新伝説誕生が期待される。
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