テレビ中継なくなり人気低下の懸念も
日本でボクシングの地上波テレビ生中継がなくなり、時が経つにつれて最初は多かった反発の声もあまり聞かれなくなった。主流の動画配信では放送時間が長いためアンダーカードからフルラウンド視聴することができ、コアなファンにとっては歓迎材料かもしれない。
ただ、ライト層やたまたまテレビをつけたら放送していたから観たといった偶然の視聴は減る。テレビ局の体力が落ちて高額の放映権料が払えなくなったため動画配信に移行し、結果的にボクサーのファイトマネーや待遇がアップする期待が持てる半面、観たい人しか観ないためマイナースポーツ化が進む懸念もある。
底辺拡大という面ではマイナスに働く可能性もあり、ボクシング界にとっては痛し痒しだろう。
メキシコより世界王者の多い日本
そんな日本ボクシング界は、実は活況だ。昭和の高度成長期なら海外の猛者を相手に戦う世界王者は国民的ヒーローだったが、今はたとえ世界王者でも知名度は低い。誰もが知る王者と言えば、井上尚弥くらいだろうか。
しかし、2024年3月1日現在、日本には9人も世界王者がいる。これはアメリカに次いで2番目に多いのだ。以下がその9人となっている。
井上尚弥(統一スーパーバンタム級王者)
井上拓真(WBAバンタム級王者)
中谷潤人(WBCバンタム級王者)
井岡一翔(WBAスーパーフライ級王者)
田中恒成(WBOスーパーフライ級王者)
ユーリ阿久井政悟(WBAフライ級王者)
寺地拳四朗(WBA・WBCライトフライ級王者)
重岡優大(WBCミニマム級王者)
重岡銀次朗(IBFミニマム級王者)
ボクシング全17階級のうち、最軽量のミニマム級から6階級には日本人王者が必ず名を連ねている状況。しかも4団体を統一してスーパーバンタム級唯一の王者となった井上尚弥だけでなく、寺地拳四朗はWBAとWBCのライトフライ級統一王者だ。
バンタム級とスーパーフライ級も4団体のうち2団体は日本人王者。ボクシング大国のアメリカでさえ15人、数々の名王者を輩出してきたメキシコも8人と日本より1人少ない(スーパー王者、暫定王者含む)。
ムエタイを国技とするタイは、WBAミニマム級王者ノックアウト・CPフレッシュマートの1人だけで、かつてのライバル・韓国は2007年から世界王者不在が続いている。アジアでは日本が一人勝ち状態なのだ。
中量級以上でも世界王者誕生の期待
しかも、虎視眈々と王座を狙う世界ランカーはまだまだいる。
現在の王者は軽量級ばかりだが、3月2日(日本時間3日)に米ニューヨーク州でIBFフェザー級王座に挑む阿部麗也(30=KG大和)、ウェルター級で日本初の世界王者を目指している佐々木尽(22=八王子中屋)ら中量級以上でも世界王者が誕生する期待もある。
また、バンタム級には特に日本人ランカーが多く、今後は世界戦ラッシュとなる可能性もあるだろう。
いつにない活況の日本ボクシング界。熱いファイトでファンを魅了し、常に話題を提供していけば、人気低下やマイナースポーツ化は防げるはずだ。
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