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韓国ボクシング界の現状、15年間も世界王者不在続く低迷の理由とは?

2022 12/26 06:00SPAIA編集部
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活況の日本ボクシング界と対照的

プロボクシングの世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)が日本初、世界でも9人目の4団体統一を果たし、日本ボクシング界は活況に沸いている。1試合で億単位のファイトマネーを稼ぐなど夢のような話も今では珍しくなくなった。

現役世界王者は井上のほか、大晦日に統一戦に臨むWBOスーパーフライ級の井岡一翔(33=志成)、WBAスーパー&WBCライトフライ級の寺地拳四朗(30=B.M.B)、WBOミニマム級の谷口将隆(28=ワタナベ)の4人。4月には村田諒太(36=帝拳)がゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)と死闘を演じるなど、2022年は話題の多い1年だった。

一方でとんと話題にならなくなった国がある。お隣、韓国だ。

現役世界王者は皆無。それどころか、日本で越本隆志と戦ったこともある元WBC世界フェザー級王者・池仁珍がケガのため防衛戦をできずにベルトを剥奪された2007年以来、なんと15年間も世界王者が誕生していない惨状だ。

張正九や柳明佑ら名王者が活躍した1980年代

かつては日本以上に世界王者を抱え、アジア随一の「ボクシング強国」と言われた時代があった。韓国で初めて世界王者が誕生したのは、白井義男が日本人として初めて世界王者になった1952年から14年後の1966年。金基洙が世界スーパーウェルター級王座を獲得した。

1970年代に入ると、輪島功一と2度の激闘を繰り広げた元世界スーパーウェルター級王者・柳済斗、ロイヤル小林からWBC世界スーパーバンタム級王座を奪った廉東均、大熊正二と3度戦った元WBC世界フライ級王者・朴賛希らが活躍。さらに1980年代には隆盛を極める。

渡嘉敷勝男や大橋秀行ら日本人ボクサーの挑戦をことごとく退けて15度防衛を果たした元WBC世界ライトフライ級王者・張正九、WBA世界ライトフライ級王座を17度防衛し、18度目の防衛戦で井岡弘樹に敗れた柳明佑らボクシング史に残る名王者が誕生した。

韓国の世界王者を一気に増殖させたのが、1983年のIBF(国際ボクシング連盟)新設だ。WBA(世界ボクシング協会)とWBC(世界ボクシング評議会)の2団体しかなかった当時、まだまだ世界的には認められておらず、日本もIBFには未加盟だったが、設立と同時に加盟した韓国では層の薄い軽量級を中心に次々に世界王者が誕生した。

フライ級の権順天、スーパーフライ級の全周都らがIBF初代王座決定戦に勝利してベルトを巻き、中には76.20キロがリミットとアジアでは最重量クラスのスーパーミドル級でも世界王者が誕生。朴鐘八はIBFスーパーミドル級王座を8度防衛した。

さらにWBAスーパーミドル級王者・白仁鉄は日本の田島吉秋の挑戦を退けるなど2度の防衛に成功。7戦目でWBA世界バンタム級王座を奪取し、スーパーフライ級と2階級制覇した文成吉や、WBA世界ミニマム級王座を5度防衛した金奉準ら強い王者を多数輩出した。

1990年代に入っても竹田益朗、淺川誠二、松本好二ら日本人挑戦者を撃退して8度防衛した元WBA世界フェザー級王者・朴永均、畑山隆則と1敗1分けだった元WBA世界スーパーフェザー級王者・崔龍洙らがベルトを巻いていた。

しかし、1990年代後半あたりから陰りが見え始め、2002年7月に崔堯三がWBC世界ライトフライ級王座を失ってからは世界挑戦するボクサーすら珍しくなっていった。

複雑に絡み合う衰退の要因

あれほど強かった韓国ボクシング界が低迷したのはなぜだろうか。1984年にIBF世界フライ級王者・権順天の防衛戦で、韓国ボクシング界の信頼を著しく貶める出来事があった。

プロモーターが元々予定していたコロンビアの挑戦者に断られたため、別のボクサーの名前を偽ってリングに上げ、試合を決行。KO勝ちした権順天に、当時の韓国大統領が祝福の電話をかけた後、実は挑戦者が「替え玉」だったことが発覚した。

韓国の世論は大噴火し、大統領を騙したという批判が殺到。プロモーターと挑戦者は逮捕され、知らずに戦った権までもが激しい批判にさらされたという。

そうして失った信頼は簡単に取り戻すことができず、1982年に始まったプロ野球「KBOリーグ」や1983年にスタートしたプロサッカー「Kリーグ」の人気上昇によって、相対的にボクシング人気は落ちていく。2002年には日韓共催ワールドカップが行われ、韓国代表がベスト4入りしたことでサッカー人気に拍車をかけた。

さらに2010年には韓国ボクシング委員会(KBC)で内紛が起こり、法廷闘争に発展。2014年にはKBCとKBFに分裂するなど業界全体にヒビが入っている状況だ。競技人口が増えるはずもなく、衰退するのは当然と言えるだろう。

韓国と言えば「コリアンファイター」と呼ばれるような、エネルギッシュに前進しながら手を出し続け、なおかつタフで打たれ強いファイターが多かった。日本のボクサーとも何度も名勝負を繰り広げ、壁にはね返されて悔し涙を流した日本選手も多い。

しかし、最近は対戦機会すら少なく、井岡一翔は31戦、井上尚弥は23戦、村田諒太は19戦しているが、3人とも韓国人選手との対戦は一度もない。韓国ボクシング界の低迷はいつまで続くのか。日本選手と切磋琢磨し、ボクシング界全体を盛り上げるためにも復活が待たれる。

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