両者とも計量は一発クリア
プロボクシングのWBC・WBOスーパーバンタム級王者・井上尚弥(30=大橋)対WBA・IBF同級王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)の4団体統一戦が26日に東京・有明アリーナで行われる。
25日の前日計量では井上がリミットの55.3キロより100グラム軽い55.2キロ、タパレスは55.0キロで一発クリア。恒例のフェイスオフでは、前回のフルトン戦は視線を逸らさず睨み合った井上も、この日はすぐに握手を求めて友好的なムードで終わった。両者とも仕上がりは万全のようだ。
井上の圧勝さえ予想される今回の一戦。自分よりも大きいナチュラルなスーパーバンタム級のフルトンを転級初戦で倒した井上にとって、転級2戦目で体のサイズも実績も自分より小さいタパレスが相手となると不安材料は少ない。タパレスの出方次第では前半のノックアウトもあるだろう。
とはいえ、何が起こるか分からないのがボクシング。拳二つで大金を稼げる競技はフィリピンでも人気が高く、日本では聞くことがめっきり減った「ハングリー精神」は時として底知れぬパワーを発揮することがある。フィリピンが生んだ名王者を振り返ってみたい。
エロルデ、ルイシト小泉ら日本でも馴染み深いフィリピン人王者
フィリピン初の世界王者がパンチョ・ビラ。1923年に世界フライ級王者となった。まだWBAもWBCもなく王者は世界に1人しかいなかった時代で、日本初の世界王者・白井義男がフライ級王座を奪った1952年より30年近く早い。ビラはアジア人初の世界王者でもあった。
戦後になると日本のリングに上がった選手も多い。ガブリエル“フラッシュ”エロルデは1960年代にスーパーフェザー級王者として君臨。世界王者になる前は日本ライト級王座を19度防衛した秋山政司や、東洋フェザー級王者・金子繁治とも対戦し、1967年6月に世界スーパーフェザー級王座を明け渡したのが沼田義明だった。
同じスーパーフェザー級で1972年にベルトを巻いたのがベン・ビラフロア。2度目の防衛戦で柴田国明に敗れたことで日本のファンにもお馴染みだ。
エルビト・サラバリアは1970年代に花形進と3度の死闘を繰り広げた元世界フライ級王者。フランク・セデニョは1984年、後楽園ホールで小林光二にフライ級王座を奪われた。
ルイシト・エスピノサは「ルイシト小泉」のリングネームで日本のリングにも上がったバンタム級、フェザー級の2階級王者。辰吉丈一郎がWBCバンタム級王座を奪った頃、WBAの対立王者だったため統一戦が期待されたが実現しなかった。
平仲明信から1992年にスーパーライト級王座を奪っていったのがモーリス・イースト。当時19歳で世界のベルトを巻いた。1997年、川島郭志からスーパーフライ級王座を奪ったジェリー・ペニャロサもペニャロサ三兄弟の三男として有名な王者だ。
パッキャオ、ドネアは世界的名ボクサー
1990年代後半に頭角を現したのがマニー・パッキャオだ。フィリピンボクシング界が生んだ最高傑作と言って間違いないだろう。1998年12月に奪ったWBCフライ級王座を皮切りに、スーパーウェルター級まで6階級制覇。巨万の富を得るとともに世界的名声を手にした。
パッキャオの後を追うように5階級制覇したのが、井上尚弥とも2度の激闘を繰り広げたノニト・ドネア。2007年のフライ級から2014年のフェザー級まで制し、フィリピンのみならず世界的な名王者の一人となった。
3階級制覇のジョンリエル・カシメロも日本での知名度は抜群。WBOバンタム級王者時代は井上尚弥を盛んに挑発していたが、対戦は実現していない。現在はスーパーバンタム級で世界ランクに入っているが、井上尚弥と戦う機会は訪れるだろうか。
タパレスは大番狂わせを演じて名王者の仲間入りを果たすことができるか。運命のゴングはもうすぐだ。
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