フェザー級転向の亀田和毅はまさかの判定負け
WBC・WBO世界スーパーバンタム級王者・井上尚弥（30＝大橋）が、WBA・IBF同級王者マーロン・タパレス（31＝フィリピン）と12月26日に日本で4団体統一戦を行うと一斉に報じられた。正式に決まれば、7月25日に8回TKO勝ちしたスティーブン・フルトン（29＝アメリカ）戦に続き、たった2戦でスーパーバンタム級の4本のベルトを統一するチャンスが訪れることになる。
ここまで25戦全勝（22KO）と無敗で4階級制覇を果たし、史上2人目の2階級で4団体統一を狙う井上は、今や世界中のボクシング関係者から注目の的。純粋に強い相手との試合を望むのはボクサーの本能だが、その上、高額のファイトマネーも見込めるとなれば、対戦相手に名乗りを挙げる選手が多いのもうなずける。全盛期のマイク・タイソンがまさにそうだった。
しかし、ここに来て対戦をアピールしていたボクサーが相次いで結果を残せず、対戦実現から後退している。その一人が亀田和毅（32＝TMK）。WBOバンタム級とWBCスーパーバンタム級暫定の2階級を制覇した元王者で、言わずと知れた「亀田三兄弟」の三男だ。
スーパーバンタム級の世界ランカーとして挑戦者決定戦に勝利するなど世界挑戦の機会を待ち続けたが、旨みのある井上尚弥の試合を優先したい統括団体の思惑などが絡んで実現しなかった。
そこで亀田は1階級上のフェザー級に転向。亀田自身も井上戦を望んでいたこともあり、先にフェザー級のベルトを獲って、5階級制覇を狙うモンスターを迎え撃つという青写真を描いた。
早速、10月7日にIBFフェザー級2位決定戦と銘打って同級8位レラト・ドラミニ（南アフリカ）と対戦したが、まさかの判定負け。元々スピードを活かして戦うアウトボクサーとはいえ、消極的な試合運びで見せ場を作れないままだった。
IBF5位だった世界ランクの降下は確実で、世界戦線から脱落。自身のSNSでは「2024年は大勝負の年にしますので気合い入れて頑張って行きます」と再起を明言したが、年齢的にも再浮上は簡単ではないだろう。
日本のリングでアピール狙ったカシメロは負傷ドロー
もう一人がジョンリエル・カシメロ（34＝フィリピン）。ライトフライ級、フライ級、バンタム級の3階級を制覇し、WBOバンタム級王者時代は対立王者だった井上を盛んに挑発していたため、日本でも有名だ。
井上戦が一度は決まりながらコロナ禍で流れると、井上はその後4団体統一し、スーパーバンタム級王座も制して4階級制覇。一方のカシメロは度重なる試合キャンセルなどを理由にバンタム級王座を剥奪と対照的なキャリアを送っており、幻の井上戦を実現すべく、スーパーバンタム級で再起した。
元WBOスーパーフェザー級王者で現在はプロモーターとして活動している伊藤雅雪氏が率いるトレジャーボクシングプロモーションと契約。世界ランキングにも復帰し、日本で井上戦をアピールすべく臨んだのが、10月12日に有明アリーナで行われた元IBFスーパーバンタム級王者・小國以載戦だった。
小國は35歳で1年以上のブランクがあったためカシメロ有利と見られていたが、結果は4回負傷ドロー。偶然のバッティングで小國が頭部から出血したことが原因とはいえ、後味の悪い結果に終わった。
しかも、伊藤氏がカシメロの練習不足を指摘するなど、わずか4ラウンドの間にスタミナ不足を露呈。井上への挑発的な発言もただのビッグマウスと言われても仕方ない状況となった。
攻め込んだ時の強さは目を見張るものがあり負けたわけでもないため、再チャンスは与えられるだろうが、井上の対戦相手としては値打ちを下げたと言わざる得ない。
井上尚弥の無敵ロードはまだまだ続く？
井上がスーパーバンタム級のベルトを集める間に、ライバルたちが勝手に脱落。まるで井上の無敵ロードをお膳立てしているかのようにも映る。
井上は4団体統一を果たしても当面はスーパーバンタム級に留まる意向を示しており、順当にタパレスを倒せば来年は4本のベルトをかけた防衛戦に臨むことになる。
現在のスーパーバンタム級は、WBA1位がタパレスに敗れた前王者ムロジョン・アフマダリエフ（28＝ウズベキスタン）、WBC1位は日本でもお馴染みの「悪童」ルイス・ネリ（28＝メキシコ）、IBFとWBO1位が15戦全勝（7KO）のサム・グッドマン（25＝オーストラリア）だ。
日本で山中慎介と2度戦い、計量オーバーやドーピング陽性反応などで悪名高いネリとの対戦なら盛り上がるだろう。いずれにせよ、我らがモンスターの進撃はまだまだ止まりそうにない。
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