アフマダリエフを破ってタパレスが王座獲得
プロボクシングのスーパーバンタム級で番狂わせがあった。WBAスーパー・IBFスーパーバンタム級王者ムロジョン・アフマダリエフ(28=ウズベキスタン)がマーロン・タパレス(31=フィリピン)に敗れたのだ。
アフマダリエフは11勝(8KO)無敗のパンチャーだったが、プロ初黒星で4度目の防衛に失敗。WBC・WBOスーパーバンタム級1位で、7月25日に同級王者スティーブン・フルトン(28=アメリカ)に挑む井上尚弥(30=大橋)が勝った場合、4団体統一に向けた次のターゲットはタパレスとなった。
あくまで井上がフルトンに勝つことが前提だが、モンスターにとって今回の王座交代劇は追い風なのか、逆風なのか。タパレスとはどんなボクサーなのか、経歴とともに紹介する。
アグレッシブで手数の多いサウスポー
タパレスは2008年にライトフライ級でプロデビューし、2013年にWBOアジアパシフィックバンタム級王座を獲得。2015年12月に京都で大森将平(ウォズ)に2回TKO勝ちすると、2016年7月にプンルアン・ソー・シンユー(タイ)に11回KO勝ちでWBOバンタム級王座を獲得した。
2017年4月には大阪で大森将平の挑戦を受け、体重超過で王座を剥奪されたものの試合は11回TKO勝ち。2019年にはIBFスーパーバンタム級暫定王座決定戦で岩佐亮佑(33=セレス)に11回TKO負けを喫したが、2021年12月には勅使河原弘晶(三迫)を3度倒して2回KO勝ちし、IBFスーパーバンタム級王座への挑戦権を獲得していた。
今回、アフマダリエフに判定勝ちして2階級制覇。ここまで40戦して37勝(19KO)3敗の戦績を残している。
フットワークも使うが、常にアグレッシブに手を出し続ける好戦的なサウスポー。ショートレンジでの右フックや相手の右に合わせる左のクロスカウンターもうまい。井上ほどではないにせよスピードもあり、対戦が実現すれば決して侮れない相手だろう。
サウスポーの強豪を倒してきた井上尚弥
ただ、身長は163センチと井上より2センチ低く、クラウチングスタイルのためさらに重心が低い。スーパーバンタム級に上げて一回り大きい相手ばかりになることを警戒していた井上にとって、体格面のハンデはなくなる。
アフマダリエフの王座陥落を予想する声が少なく、今回の王座交代劇が番狂わせと伝えられるのも、タパレスが下の階級から上げてきたことと無関係ではないだろう。タパレスの手数と出入りの激しさにアフマダリエフが手を焼き、さばき切れなかったというのが実情だ。
井上はサウスポーに苦手意識はなく、過去にはWBOスーパーフライ級王者だったオマール・ナルバエス(アルゼンチン)を2回KO、WBSS(ワールドボクシングスーパーシリーズ)1回戦ではフアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)をわずか70秒でKO、バンタム級の防衛戦ではマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)を3回TKOと、歴戦のサウスポーをノックアウトしている。
タパレスは岩佐の左ストレートを顎に受けて倒されており、無類の打たれ強さを誇るタイプでもなさそうだ。フルトンに比べるとやりやすい相手で、井上がフルトン戦をクリアすれば、バンタム級に続く4団体統一は一気に現実味を増すだろう。
もちろん、他のランカーも世界挑戦の機会をうかがっており一筋縄ではいかないが、井上にとっては追い風と言える。まずは7月25日、東京・有明アリーナでフルトンに勝って4階級制覇。さらにその先に、ボクシング史上初の2階級で4団体統一という偉業が見えてくる。
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