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清水聡「五輪メダリスト対決」にKO負けで引退示唆、記憶にも記録にも残るボクサー人生

2023 7/28 07:00SPAIA編集部
清水聡,ⒸSECOND CAREER
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ⒸSECOND CAREER

世界フェザー級王者ラミレスの強打に力尽く

2012年ロンドン五輪バンタム級銅メダリストからプロボクシングに転向した清水聡(37=大橋)が25日、東京・有明アリーナでWBO世界フェザー級王者ロベイシ・ラミレス(29=キューバ)に5回1分8秒TKO負けした。

ラミレスはロンドン五輪フライ級と2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級で金メダルを獲得後にプロ転向。今年4月に獲得したWBOフェザー級王座の初防衛戦は「五輪メダリスト対決」でもあった。

試合は身長179センチとフェザー級では群を抜いて長身の清水に、165センチのラミレスが左右のパンチを突き上げる展開。清水も自ら前に出て長いリーチを活かしたストレートを放つが、攻め込まれるとガードを固めて防御一辺倒になり見栄えが悪い。

5回、ラミレスが左アッパーを連打すると清水は鼻血をしたたらせながら膝をつくダウン。辛うじて立ち上がったもののラミレスの連打を浴びたところでレフェリーが試合を止めた。

試合後の会見では引退を示唆。村田諒太以来、日本で2人目となる五輪メダリストからプロでも世界王者を目指したが、夢は叶わないままグローブを吊るすことになりそうだ。

清水聡とロベイシ・ラミレス

ⒸSECOND CAREER

もしロンドン五輪後すぐにプロ転向していれば…

清水は岡山県総社市出身。関西高から駒澤大でアマチュアキャリアを積み、2008年北京五輪では2回戦で敗退した。2009年から自衛隊体育学校に進み、ロンドン五輪バンタム級で銅メダルを獲得。ミドル級の村田諒太より先に行われたため、五輪男子ボクシングの日本選手では、1968年メキシコ大会の森岡栄治以来44年ぶりの快挙となった。

同じロンドン五輪で金メダルを獲得した村田諒太は翌2013年にプロ転向したが、清水はAIBA(国際ボクシング協会)が設立するプロ団体に参加。2016年1月にリオ五輪の代表選考会で敗れ、大橋ジムからプロ転向した。

プロデビューは同年9月。5回KO勝ちを収めたが、この時すでに30歳だった。ミドル級の村田以上にスピードが必要なフェザー級だけに加齢による衰えは早い。もしロンドン五輪が終わってすぐにプロ転向していれば、また違うプロキャリアを歩んでいたかも知れない。

プロ転向後は4戦目で東洋太平洋フェザー級王座に就くなど順調だったが、2019年に9戦目でジョー・ノイナイ(フィリピン)に6回TKO負けで初黒星。その試合で両眼窩底を骨折し、コロナ禍も重なってその後は思ったようにキャリアを積めなかった。

アマチュアで170戦150勝(70KO・RSC)20敗、プロでは13戦11勝(10KO)2敗。このまま引退すれば、プロでは世界の頂点に届かなかったことになるが、五輪でメダルを獲得した輝かしい実績は永遠に残る。

同時にそのメダルを紛失したと世間を騒がせながら、自分の衣装ケースに入れたことを忘れていたという、今となっては笑えるエピソードも残した。まさに記憶にも記録にも残る、愛されるボクサーだった。

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