ワイルダー陥落以来、3年間もヘビー級王者不在
かつてプロボクシングのヘビー級と言えばアメリカが牛耳っていた。モハメド・アリ、ジョー・フレージャー、ケン・ノートン、ジョージ・フォアマン、ラリー・ホームズ、マイク・タイソン、イベンダー・ホリフィールドら歴代の名王者は全てアメリカ人だ。
しかし、21世紀に入り、それまでプロボクシングに参戦していなかった旧ソ連の選手がプロのリングに上がるようになると徐々に状況が変化。ウクライナのウラジミール・クリチコは2006年に獲得したIBFヘビー級王座を18度防衛するなど長く王座に君臨し、世界のヘビー級地図は塗り替えられていった。
現在、WBA・IBF・WBOヘビー級王者はオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)、WBC王者はタイソン・フューリー(イギリス)。2020年2月22日にWBC王者だったデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)がフューリーに7回TKO負けして王座を失って以来3年間、主要4団体のヘビー級のベルトはアメリカ国外にある。
アンダーソンは無傷の13連続KO勝利
ヘビー級の世界ランキングを見てもアメリカ選手は少ない。ワイルダーや元WBA・IBF・WBO王者アンディ・ルイス・ジュニア(アメリカ)が返り咲く可能性もあるが、いずれも30代でボクサーとして残りの現役生活は決して長くないだろう。
アメリカにヘビー級のベルトと威信を取り戻す期待をかけられているのが、ジャレッド・アンダーソンだ。
1999年11月16日生まれの23歳。身長193センチ、リーチ199センチで、アマチュア時代に全米選手権を連覇した。プロデビュー前にプロモート会社大手のトップランクと契約を結び、ここまで13戦全勝(13KO)のパーフェクトレコードをキープしている。
ヘビー級らしいパワフルなパンチを振るい、人気が出そうなスタイル。一発一発を力むためパンチの回転力に欠けるが、年齢的にもまだまだ成長が見込める。
4月8日にニューアークで行われるシャクール・スティーブンソン対吉野修一郎のWBCライト級挑戦者決定戦のアンダーカードで、ジョージ・アリアス(ドミニカ)と対戦予定。連続KO勝利を14に伸ばせば、現在WBC11位、WBO9位の世界ランキングも上がるだろう。
旧ソ連とイギリスに圧されるアメリカ
シルベスター・スタローンが主演し、1985年に公開された映画「ロッキー4/炎の友情」では、アメリカの世界ヘビー級王者ロッキー・バルボアが、ドルフ・ラングレン演じるソ連のアマチュアヘビー級王者イワン・ドラゴをノックアウトするという単純明快なストーリーで大ヒットした。
東西冷戦時代が終わり、映画の中の話だった旧ソ連のボクサーたちが実際にヘビー級王座を奪い、イギリスの復権もあってアメリカの存在感は薄れている。
アンダーソンは再びヘビー級戦線の中心をアメリカに戻せるだろうか。23歳のホープの今後に注目だ。
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