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ボクシング「階級の壁」に跳ね返された名王者たち、井上尚弥が4階級制覇に挑む

2023 3/8 06:00SPAIA編集部
デラホーヤに敗れたフリオ・セサール・チャベス,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

井上尚弥が5月7日にフルトン挑戦

プロボクシングの前世界バンタム級4団体統一王者で現WBC・WBOスーパーバンタム級1位・井上尚弥(29=大橋)が5月7日に横浜アリーナでWBC・WBO統一王者スティーブン・フルトン(28=アメリカ)に挑戦することが決まった。

パウンド・フォー・パウンド1位にランクされるなど全階級を通じて「世界最強」の呼び声高い井上にとって、4階級制覇のかかるビッグマッチ。井上有利の見方も多いが、バンタム級から転級初戦でいきなり統一王者と戦うのはリスクも伴う。

118ポンド(53.52キロ)がリミットのバンタム級に比べ、スーパーバンタム級は122ポンド(55.34キロ)と約1.8キロ重い。この僅かな差が、ボクサーにとってはとてつもなく大きな差なのだ。

1階級違えば、骨格もパンチ力も違う。ましてや身長165センチ、リーチ171センチの井上に対し、フルトンは身長169センチ、リーチ179センチと一回り大きい。しかも足を使って距離を取るボクサータイプとあって、井上と言えどパンチを当てるのは決して簡単ではないだろう。

これまでも「階級の壁」に跳ね返されたボクサーは数多い。下の階級では無敵を誇った名王者が階級を上げて涙を呑むことは珍しくないのだ。

「ニカラグアの貴公子」アレクシス・アルゲリョ

「ニカラグアの貴公子」と呼ばれたアレクシス・アルゲリョは、フェザー級からライト級まで3階級制覇した歴史に残る名ボクサー。1975年には3度目の防衛戦で来日し、「KO仕掛人」ロイヤル小林に5回KO勝ちして強さを見せつけた。

3階級制覇が最多記録だった1982年、アルゲリョは4階級制覇を狙ってWBAスーパーライト級王者アーロン・プライヤーに挑戦。史上初の快挙が期待されたが、14回TKOで力尽きた。

翌年の再戦でも10回KO負け。生涯戦績82勝(65KO)8敗を誇った名王者も4階級目の頂点には届かなかった。

「メキシコの英雄」フリオ・セサール・チャベス

メキシコの英雄フリオ・セサール・チャベスも4階級制覇に届かなかった一人だ。スーパーフェザー級からスーパーライト級まで無敗のまま3階級制覇を達成。一時は「パウンド・フォー・パウンド最強」の名を欲しいままにしていた。

1994年、WBCスーパーライト級王座13度目の防衛戦でフランキー・ランドールに判定負けして91戦目で初黒星。ランドールには雪辱して王座返り咲きを果たしたが、1996年にオスカー・デ・ラ・ホーヤに4回TKO負けを喫し、新旧交代を印象付ける結果となった。

その後、1階級上のWBCウェルター級王者となったデ・ラ・ホーヤと再戦したのが1998年。すでに38歳と全盛期を過ぎていたチャベスは、リベンジと4階級制覇を狙ったものの8回終了TKO負けを喫した。

通算戦績108勝(87KO)6敗2分け。メキシコのアステカスタジアムで行われた試合で13万人の観客動員を記録するなど、まさに国民的英雄だった。

3階級制覇に4度挑んだ井岡弘樹

日本で「階級の壁」に何度も跳ね返された一人が井岡弘樹だ。1987年、国内最年少の18歳9カ月でWBCミニマム級王座を獲得。1991年には36戦全勝を誇ったWBAライトフライ級王者・柳明佑(韓国)に判定勝ちして2階級制覇を果たした。

柳との再戦で敗れると日本初の3階級制覇を狙ってフライ級に転向。しかし、1993年にWBAフライ級王者デビッド・グリマンに8回TKO負け、1995年にWBAフライ級王者セーン・ソー・プルンチットに10回TKO負け、1997年にWBAフライ級王者ホセ・ボニージャに7回TKO負けを喫した。

その後、さらに1階級上げ、1998年にはWBAスーパーフライ級王者・飯田覚士に挑戦したが判定負け。夢の3階級制覇は果たせないまま、後の世界王者・徳山昌守とのノンタイトル戦に敗れて引退した。

通算戦績33勝(17KO)8敗1分け。長身を活かしたボクサースタイルで、ライトフライ級王座を17度防衛していた柳を下した一戦は殊勲の白星だった。

ボクサーにとって階級を上げれば上げるほど苦しい戦いを強いられることは間違いない。身長やリーチでハンデを背負うことになり、3階級、4階級と上げた頃には現役生活の晩年に差し掛かってスピードが衰える場合も多いからだ。

ただ、井上尚弥は今がピークとも言える脂が乗った時期。これまでもことごとく予想を上回る結果を残してきた。「階級の壁」を乗り越え、日本選手2人目の4階級制覇を期待したい。

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