「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

村田諒太のベストバウトは?世界ミドル級王者の偉大な足跡

2023 2/25 06:00SPAIA編集部
村田諒太,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

ゴロフキン戦「最後の試合」

プロボクシングの元世界ミドル級王者・村田諒太(37=帝拳)が引退を決断したと一斉に報じられた。

22日に行われた年間表彰式に出席し、年間最高試合に選ばれたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)戦について「あの試合は僕の中では最後の試合」と発言。一部では、帝拳・本田明彦会長に引退の意向を伝えて了承されており、3月に引退会見に臨むと報じられている。

IBFミドル級王者だったゴロフキンとの統一戦に9回TKO負けした2022年4月9日から10カ月。振り返れば、ロンドン五輪で金メダルを獲得し、プロでは2度も世界王座に返り咲いた。ゴロフキンという歴史に残る名王者と激闘を繰り広げた。ファイトマネーは6億円とも言われ、まさしく富と名声を手にした。

ゴロフキンへのリベンジを期待するファンもいるかも知れないが、大金が動くビッグマッチをそう何度も組めるものではない。37歳という年齢を考えても引き際としてはベストのタイミングだろう。ボクシングは危険なスポーツだ。他の競技では「ボロボロになるまでやる」という選手もいるが、ボクサーには当てはまらない。

ラスベガスでブラントに判定負けして王座陥落

プロ転向後の戦績は16勝(13KO)3敗。19戦のうちベストバウトはどの試合だろうか。

年間最高試合に選ばれたゴロフキン戦は見応え十分のファイトだったが、それまでのストーリーやドラマ性も加味すると、ロブ・ブラント(アメリカ)第2戦ではないか。

2018年10月20日の第1戦はまさかの結末だった。アッサン・エンダム(フランス)に雪辱して奪ったWBAミドル級王座2度目の防衛戦。ラスベガスのパークシアターだった。

ブラントは指名挑戦者とはいえパワーはなく、村田にとってそれほど強敵とは見られていなかった。ラスベガスで日本の世界王者がメインを張るという晴れ舞台で、誰もが村田のKO防衛を予想していた。

しかし、序盤からブラントが足を使いながら放つ軽いパンチをもらい続けた村田は、徐々に劣勢に陥る。前半は時折見せていた不敵な笑みも消え失せ、顔は赤く腫れ上がっていった。

会場に詰め掛けた日本のファンから村田コールを沸き起こるが、それをかき消すようなUSAコールが挑戦者を後押し。最後まで決定打を決められないまま12ラウンド終了のゴングを聞いた村田に笑顔はなかった。

「アンド、ニュー!」。リングアナウンサーが判定で新王者誕生をコールし、村田はわずか1年でベルトを手放すことになった。

劇的KOでリベンジ

無冠となった村田はブラントとの再戦のリングに上がった。2019年7月12日、大阪府立体育会館。母国で世界王座を獲得したブラントが、今度は敵地に乗り込んで村田にチャンスを与えた。

1ラウンド、お互いに手の内を知る両者は予想以上の打撃戦を展開。打ち合いは村田の望むところだった。2ラウンドには王者をコーナーに追い詰めて連打でダウンを奪う。立ち上がったブラントに猛攻を仕掛け、最後は強烈な右をクリーンヒットしてグラつかせるとレフェリーが試合を止めた。

屈辱を晴らす劇的な王座返り咲き。ラスベガスではかき消された村田コールが鳴りやまない。場内は大歓声に包まれ、ラウンドガールまでが感動の涙をこぼした。

ミドル級を制した日本選手は竹原慎二と村田の2人のみ。アマチュアとプロの両方で世界の頂点に立ったのは、全階級を通じて日本では村田だけだ。

偉大なる世界ミドル級王者・村田諒太。不世出のファイターは間もなくグローブを吊るす。

【関連記事】
歴代のボクシング年間最高試合、今年は村田諒太vsゴロフキンで決まり?
那須川天心が実感するキックとボクシングの違い、相手より自分と戦う「元神童」
井岡一翔に「逃げた」の批判相次ぐ…王座返上で“商品価値”低下の懸念