4月9日にさいたまスーパーアリーナで世界ミドル級王座統一戦
プロボクシングのWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)とIBF同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(39=カザフスタン)の2団体王座統一戦が4月9日にさいたまスーパーアリーナで行われる。
一度は昨年12月29日に決まりながら新型コロナウイルスの影響で延期。村田がかねてから待ち望んだ一戦が、ようやく実現することになった。
両者ともにハードパンチャーで好戦的なスタイルだけにノックアウトは必至。判定までいく可能性は低いだろう。どちらが勝つにしても、ファンの記憶に刻まれるようなスリリングなファイトになることは間違いない。
ボクシング界では毎年「年間最高試合」が選出され、プロとアマそれぞれの最優秀選手賞(MVP)や技能賞、殊勲賞、新鋭賞などとともに表彰される。
その歴史は古く、戦後間もない1949年に後の世界フライ級王者・白井義男と堀口宏の日本バンタム級タイトルマッチが選出されたのが最初。歴代の主な年間最高試合が下の表だ。
19歳のファイティング原田がポーン・キングピッチを倒した1962年の世界フライ級タイトルマッチや、「黄金のバンタム」エデル・ジョフレに初黒星をつけた1965年の世界バンタム級タイトルマッチは今も語り継がれる名勝負だ。
世界戦で初の日本人対決となった1967年の沼田義明vs小林弘(小林の12回KO勝ち)、金沢和良がルーベン・オリバレスに最後まで立ち向かったものの14回KO負けした1971年の世界バンタム級タイトルマッチ、大場政夫が初回にダウンを奪われたチャチャイ・チオノイを12回逆転KOした1973年の世界フライ級タイトルマッチなど、オールドファンには懐かしいファイトが並ぶ。
13回防衛の日本記録を持つ具志堅用高は1976年のファン・グスマン戦を始め、5年連続で年間最高試合に選ばれた。さらに世界スーパーフライ級王者・渡辺二郎も1984年のパヤオ・プーンタラット戦など4年連続で受賞。長期防衛を果たした世界王者が日本ボクシング界をいかに盛り上げていたかが分かる。
「逆転の貴公子」高橋ナオトの日本タイトル戦も
1986年に浜田剛史がレネ・アルレドンドに挑んだ世界スーパーライト級タイトルマッチは、長いボクシング史においても特にドラマチックな一戦だった。自身の強打に耐え切れなかった左拳を4度も骨折した浜田は、右手一本でサンドバックを叩き続け、ようやくつかんだ世界初挑戦でエネルギーを爆発させて強打の王者を1回KO。国技館に座布団が舞う劇的なシーンをご記憶の方も多いだろう。
現在は「世界戦」と「世界戦以外」でそれぞれの年間最高試合を選定しているが、かつては分かれておらず、世界戦以外から選ばれることもあった。1989年、高橋ナオトがマーク堀越を逆転KOで破った日本スーパーバンタム級タイトルマッチはダウン応酬の名勝負だった。
1994年、薬師寺保栄が辰吉丈一郎に判定勝ちした世界バンタム級王座統一戦や、畑山隆則が坂本博之を倒した2000年の世界ライト級タイトルマッチなどは日本中が注目したファイトだった。その後も長谷川穂積、西岡利晃、山中慎介らがファンを楽しませた。
2019年は井上尚弥とノニト・ドネアの死闘
2019年に井上尚弥が流血しながらノニト・ドネアとの死闘を制した世界バンタム級タイトルマッチは記憶に新しい。井上はドネアと再戦する方向で交渉が進んでいると報じられており、決まれば世界が注目する一戦となる。
2020年の大晦日に戦った井岡一翔と田中恒成の世界スーパーフライ級タイトルマッチも印象的な試合だった。無敗で4階級制覇を狙う田中が有利とする声も少なくなかったが、すでに4階級制覇を達成している井岡が完璧なノックアウト勝利。井岡がパウンドフォーパウンドでランキング入りするなど、世界的な評価を高めるきっかけになった試合だった。
昨年は矢吹正道が寺地拳四朗を破った世界ライトフライ級タイトルマッチ、世界戦以外では中谷正義がラスベガスでワシル・ロマチェンコに敗れた一戦が選出されている。村田vsゴロフキンは果たして今年度の年間最高試合に選ばれるだろうか。永遠に語り継がれるような手に汗握る好ファイトを期待したい。
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