24戦全勝の元世界フライ級王者
前世界バンタム級4団体統一王者・井上尚弥(29=大橋)が話題を独り占めしているような状況の日本ボクシング界で、次に続く大物がいる。元WBO世界フライ級王者・中谷潤人(25=M.T)は「ネクストモンスター」と呼ばれ、今後を期待されているサウスポーだ。
中学1年時に元東洋太平洋スーパーバンタム級王者・石井広三氏が会長を務めていた三重県桑名市のKOZOジムに入門。卒業後は高校に進学せず単身アメリカへボクシング留学し、2015年4月にM.Tジム(神奈川県相模原市)からミニマム級でプロデビューした。
2016年には後に世界ライトフライ級王座を獲得する矢吹正道に判定勝ちして全日本新人王を獲得。2019年2月に日本フライ級王者となり、2020年11月にジーメル・マグラモ(フィリピン)を8回でKOしてWBO世界フライ級王座を獲得した。
2021年9月に米アリゾナ州ツーソンで指名挑戦者のアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)に4回TKO勝ちで初防衛。2022年4月には山内涼太(28=角海老宝石)を8回に倒して2度目の防衛を果たし、WBOフライ級のベルトを返上した。
2022年11月には元世界ミニマム級王者フランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(メキシコ)に判定勝ち。現在WBOスーパーフライ級1位にランクされており、WBOは同級王者・井岡一翔(33=志成)に180日以内の対戦を指示している。
戦績は24戦全勝(18KO)。身長は2階級上の井上尚弥より7センチも高い172センチあり、スピードとパワーを兼ね備えたボクサーファイターだ。
目標は5階級制覇
中谷は渡嘉敷勝男氏、竹原慎二氏、畑山隆則氏が出演するYouTube番組「ぶっちゃけチャンネル」でフェザー級までの5階級制覇を目標に掲げていることを明かした。
まだフライ級しか獲っていないにもかかわらず大口を叩いているように聞こえないのは、並外れたセンスとともに身長が高いこともある。中谷がベルトを狙う井岡は165センチ、井上尚弥との対戦が噂される世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(アメリカ)でも169センチだ。
現役のWBAフェザー級王者リー・ウッド(イギリス)は170センチ、WBC同級王者レイ・バルガス(メキシコ)は172センチ、IBF同級王者ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)は163センチ、WBO同級王者エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)は170センチだから、体格面だけで言えば中谷はフェザー級でも平均的かそれ以上と言える。
まだまだ先のことは分からないが、経験を積んでパワーをつければ5階級制覇の可能性もあるだろう。
ボクシング界の三浦知良?COWCOW多田?
中卒で単身渡米した経歴は、静岡学園高を1年で中退してブラジルに渡ったサッカーの三浦知良を想起させる。そのチャレンジ精神や競技にかける思いは共通するものがあるだろう。
特異なキャリアとは裏腹に話す口調は穏やかで、風貌はお笑いコンビ「COWCOW」の多田健二さんに似ていると話題になったこともある。穏やかで、どこか頼りなさげな雰囲気を漂わせるキャラクターは人気の出る要素かも知れない。
WBOスーパーフライ級王者の井岡は2022年大晦日にWBA同級王者ジョシュア・フランコ(アメリカ)と引き分け、王座統一はならなかった。次戦は中谷戦のほか、フランコとの再戦や、WBC同級王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との統一戦に向かう可能性もあるという。
WBOスーパーフライ級3位にランクされる元世界3階級王者・田中恒成(27=畑中)も世界挑戦の機会をうかがっており、交渉の行方は流動的だ。中谷に2階級制覇のチャンスが訪れるのはいつになるだろうか。井岡が挑戦を受けてくれれば衝撃の新旧交代劇が見られる可能性も十分にある。
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