世界ランカー対決に完勝
プロボクシングの元3階級制覇王者・田中恒成(27=畑中)が12月11日にWBOスーパーフライ級4位ヤンガ・シッキボ(28=南アフリカ)と10回戦を行い、判定勝ちした。
田中は2020年大晦日に井岡一翔(33=志成)に8回TKO負けして以来3連勝。現在スーパーフライ級でWBA4位、WBC4位、IBF3位、WBO3位と各団体で上位にランクされており、来年には世界挑戦のチャンスが巡ってきそうだ。
試合は2回に田中が左まぶたをカットしたものの以降は主導権を握り、ダウンこそ奪えなかったが3-0の明白な判定勝利。世界ランカー対決を制して成長の跡を示した。
田中は中京高時代に高校4冠に輝き、畑中ジムからプロ転向。2015年5月に井上尚弥の6戦目を上回る、日本最速の5戦目でWBOミニマム級王座を奪取した。
さらに2016年12月には井上尚弥と並ぶ日本最速タイの8戦目でWBOライトフライ級王座を獲得し、2階級制覇を達成。2018年9月には木村翔に判定勝ちしてワシル・ロマチェンコと並ぶ世界最速タイの12戦目で3階級制覇した。スピードあふれるボクシングで数々のスピード達成記録を塗り替えてきた文字通りの「スピードスター」だ。
世界ランキングは4団体とも上位
無敗のまま井岡に挑んで敗れたのが2年前。猛スピードでボクシング人生の階段を駆け上がってきた田中は回り道を余儀なくされた。
しかし、一から自分のボクシングを見つめ直し、井上尚弥の試合前にはスパーリングパートナーを務めるなど厳しいトレーニングを積んだ。実力とともに世界ランキングも少しずつ上昇。来年には4階級制覇に再挑戦する機会が巡ってくる可能性も十分にある。
WBO王者の井岡は大晦日にWBA王者ジョシュア・フランコ(27=アメリカ)と統一戦を行い、どちらが勝っても2団体が統一される。WBCはファン・フランシスコ・エストラーダ(32=メキシコ)がローマン・ゴンサレスに判定勝ちして12月3日に王座に就いたばかり。IBFのベルトを持つフェルナンド・マルティネス(31=アルゼンチン)も無敗の王者だ。
また、元WBOフライ級王者の中谷潤人(24=M.T)もWBOスーパーフライ級1位にランクされており、国内外を問わず強豪がひしめている。これまで3階級全てWBOのタイトルだった田中も、スーパーフライ級では4団体のどの王座でチャンスが来るか分からない。状況によってはもう1試合ノンタイトル戦を挟む可能性もあるだろう。
日本人2人目の4階級制覇は田中恒成か井上尚弥か
4階級制覇は長いボクシングの歴史上でも世界で22人しか達成していない偉業。6階級制覇のオスカー・デラホーヤやマニー・パッキャオ、5階級制覇のトーマス・ハーンズ、シュガー・レイ・レナード、フロイド・メイウェザー、井上尚弥に敗れたノニト・ドネアらそうそうたるビッグネームが並ぶ。
日本で唯一の達成者・井岡一翔が、スーパーフライ級王座を奪ったのが26戦目。4団体統一したバンタム級王座を返上し、スーパーバンタム級で4階級制覇を狙う井上尚弥は24戦している。ここまで18勝(10KO) 1敗と19戦しかしていない田中には、日本最速4階級制覇の記録がかかるのだ。
また、井上が転級するスーパーバンタム級も混沌としており、世界挑戦のチャンスがいつ巡ってくるのかは不透明。どちらが先に4階級制覇を達成するのかも注目ポイントだろう。早ければいいというわけではないとはいえ、日本ボクシング界2人目と3人目ではインパクトが違うのも事実だ。
田中のハンドスピードは世界でも屈指で、まばたきを許さないシャドーは見ていても惚れ惚れする。かつては「中京の怪物」と呼ばれたが、今や中京にとどまらず日本が誇るスピードスターだ。挫折を味わった3階級王者が再びスポットライトを浴びる日を楽しみに待ちたい。
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