スーパーバンタム級王者フルトンがフェザー級転向?
プロボクシングのWBA・WBC・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)がWBO王者ポール・バトラー(34=イギリス)と戦う4団体統一戦は12月13日に東京・有明アリーナで行われる。
勝てば日本初、世界でも9人目の快挙。井上は「バンタム級での最終章であり、スーパーバンタム級へのスタート」と勝てば1階級上げる意向を示しており、4団体統一の次は4階級制覇を狙うことになる。
バトラー戦を前に気の早い話ではあるが、スーパーバンタム級で気になる動きがあった。井上のターゲットの一人と見られていたWBC・WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(28=アメリカ)がフェザー級に上げるというのだ。
フルトンはWBA・IBF同級王者ムロジョン・アフマダリエフ(28=ウズベキスタン)との4団体統一戦を熱望していたが、アフマダリエフの左拳骨折などもあって交渉成立が見込めないため、階級を上げて2階級制覇にターゲットを変更。WBCフェザー級王者レイ・バルガス(32=メキシコ)がスーパーフェザー級に上げる意向を表明したため、その後継王座を狙ってフルトンが暫定王座決定戦に出る可能性があるという。
空いた椅子を下の階級から上げて狙うという、まるでサラリーマンの「玉突き人事」のような状況だが、もしフルトンがフェザー級王座を獲得してスーパーバンタム級のベルトを返上した場合、ランキング上位者同士で王座決定戦が行われる。現在、WBCスーパーバンタム級1位にランクされるのが、日本でも有名なルイス・ネリ(27=メキシコ)なのだ。
ドーピングに計量オーバーで「悪童」と呼ばれたネリ
日本ではネリに良い印象を持つファンはほとんどいないだろう。
2017年8月、当時WBCバンタム級王座を12度防衛し、具志堅用高の持つ13度防衛の日本記録に王手をかけていた山中慎介に4回TKO勝ち。山中のタイ記録を阻止したが、試合後のドーピング検査で陽性反応が出たため、2018年3月に山中との再戦が決まった。
しかし、今度は試合前日の計量でリミットオーバーという大失態。体重制限のあるボクシングでウェイトを守れないという恥ずべき行為に、思わず山中も「ふざけるな」と声を荒げた。
ネリのベルトは剥奪され、山中が勝てば王座獲得という条件で試合が行われたが、結果はネリの2回TKO勝ち。後味の悪さを残したまま、山中はこの試合を最後に引退した。
ネリはその後、1階級上げ、2020年9月にWBCスーパーバンタム級王座を獲得。2021年5月にWBAスーパーバンタム級王者ブランドン・フィゲロアとの統一戦に7回KOで敗れ、初黒星を喫した。
その後、再起して2022年10月にはダビッド・カルモナを3回で倒すなど、ここまで33勝(26KO)1敗。WBCのトップコンテンダーとして世界挑戦のチャンスを待っており、WBOでも2位、IBFでも3位にランクされている。WBC同級2位アザト・ホバニシャン(24=アルメニア)と挑戦者決定戦に臨むいう情報もあるが、事態は流動的だ。
先が見通せないスーパーバンタム級戦線
井上が4団体統一を果たせば、おそらくバンタム級の4本のベルトは返上して、来年にはスーパーバンタム級に殴り込みをかける。
転級初戦がいきなり世界戦となるかどうか分からないが、その頃にはスーパーバンタム級の勢力図が塗り替わっている可能性も十分。日本では「悪童」として有名なネリが、もしかしたらスーパーバンタム級王者となっている可能性もあり、そうなると井上の対戦相手候補の一人に挙がるだろう。
山中の記録を止めただけでなく、ドーピングや減量失敗で日本のリングを散々かき回したネリ。井上が山中の敵討ちをして4階級制覇となれば最高のシナリオだ。
12月13日、dTVおよび、ひかりTVで独占配信される世界バンタム級4団体統一戦。歴史的大一番も日本が誇る「モンスター」にとっては通過点に過ぎない。シナリオのないドラマはまだまだ続く。
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