KO勝ちで4団体統一すれば世界初
運命の一戦が迫ってきた。プロボクシングのWBA・WBC・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)がWBO同級王者ポール・バトラー(34=イギリス)と戦う4団体統一戦は12月13日に東京・有明アリーナで行われる。
4団体統一を達成すれば日本ボクシング史上初、世界でも9人目の快挙。しかも井上はベルトを1本ずつ、全て他団体の王者からKOで獲得しており、バトラー戦もKO勝ちすれば世界でも史上初の大偉業となる。
過去の8人は一度に2本以上のベルトを獲得したり、世界ランカー同士の王座決定戦が含まれていたり、判定勝ちがあったり、井上と同じ道のりで4団体統一した王者は皆無。2018年5月にジェイミー・マクドネルに1回TKO勝ちしてWBAバンタム級タイトルを奪ってから4年半かけて歩んできた井上の壮大な王座統一計画が、ついにクライマックスを迎える。
世界で最も権威があるとされるアメリカのボクシング誌「ザ・リング」の全階級を通じたランキング「パウンド・フォー・パウンド」で1位にランクされ、日本人ボクサーとして初めて「世界最強王者」と認められた井上。もし、4団体統一に成功すれば、それ以上の勲章はあるだろうか。
ボクシング界は国民栄誉賞の受賞者なし
これまでボクシング界で国民栄誉賞を受賞したボクサーはいない。日本で初めて世界王者となった白井義男や2階級制覇のファイティング原田の時代にあれば受賞していたかも知れないが、同賞が創設されたのは1977年。プロ野球の本塁打世界記録を樹立した王貞治を称えるためだった。
以降、スポーツ界では柔道の山下泰裕、プロ野球で連続出場記録を達成した衣笠祥雄、大相撲の千代の富士、マラソンの髙橋尚子、サッカーの女子ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」、女子レスリングの吉田沙保里、大相撲の納谷幸喜(元横綱大鵬)、プロ野球の長島茂雄と松井秀喜、女子レスリングの伊調馨、フィギュアスケートの羽生結弦と、時代を彩ってきたアスリートが並ぶ。
井上が4団体統一すれば、ここに名を連ねても何ら違和感はないだろう。KO奪取なら世界初の偉業なのだ。日本ボクシング界初の受賞者として、井上こそ相応しい存在と言える。
イチロー、大谷翔平は辞退
国民栄誉賞は時として政治家の人気取りという批判を受ける。政治で難題に直面した時、不祥事が起きた時などに国民の目先を変えるために授与するという指摘だ。
受賞する側としては光栄なことに違いないが、現役選手の場合などは辞退することもある。イチローはメジャーリーグでMVPに輝いた2001年、シーズン最多安打を記録した2004年、現役引退した2019年に3度打診を受けたが、いずれも固辞。大谷翔平もメジャーリーグでMVPを獲得した2021年に打診されたが辞退している。
井上は4団体統一に成功すればスーパーバンタム級に上げ、さらに35歳まで現役を続けたい意向を示している。まだ道半ばということを考えれば、仮に打診されても断るかも知れないが、4団体統一が受賞に値する偉業であることに異論を挟む国民は少ないのではないか。
dTVおよび、ひかりTVで独占配信される13日の運命の一戦。井上尚弥と同じ時代に生き、リアルタイムで世界最高のファイターを観られることは最高の喜びだ。
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