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井上尚弥はKO率でも歴代1位、日本ボクシング界の記録を塗り替え続ける最強王者

2022 12/9 06:00SPAIA編集部
ダスマリナス戦の井上尚弥,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

世界戦18連勝、最短KOなど数々の日本記録を樹立

プロボクシングのWBA・WBC・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)がWBO王者ポール・バトラー(34=イギリス)と戦う4団体統一戦は12月13日に東京・有明アリーナで行われる。

井上はこれまで多くの日本記録を塗り替えてきた。6戦目で世界王座獲得(後に田中恒成が5戦目で獲得して記録更新)、8戦目で2階級制覇(当時は世界でも最速記録だったが、後にワシル・ロマチェンコが7戦目で達成)、世界戦18連勝(2位は具志堅用高の14連勝)、世界戦17KO(2位は井岡一翔と内山高志の10KO)、世界戦最短KO(パヤノを70秒でノックアウト)など多くの記録で日本ボクシング界の頂点に立っている。

残るは複数階級制覇(最多は井岡一翔の4階級、井上は3階級)と世界戦最多勝利(1位は井岡一翔の20勝、井上は18勝)くらいだろう。井上はバンタム級の4団体統一に成功すればスーパーバンタム級に上げる意向を示しており、今の強さなら4階級制覇も時間の問題と見られる。

KO率87%は日本の歴代世界王者でトップ

あまり話題にならないが、実はKO率でも日本の歴代世界王者で1位だ。KO率とは試合数に占めるノックアウト勝利の割合を示すが、23戦全勝(20KO)の井上はKO率87%を誇る。

歴代のハードパンチャーを振り返っても、「KO仕掛人」と呼ばれた元世界スーパーバンタム級王者ロイヤル小林は35勝(27KO)8敗でKO率63%。サムエル・セラノをワンパンチで倒した元世界スーパーフェザー級王者・上原康恒でも27勝(21KO)5敗でKO率66%だ。

15連続KOの日本記録を持つ元世界スーパーライト級王者・浜田剛史は21勝(19KO)2敗1無効試合でKO率79%。エドウィン・ロサリオを92秒で倒した元世界スーパーライト級王者・平仲明信も20勝(18KO)2敗でKO率82%と井上に及ばない。

無敗でタイトルを獲得した元世界ミドル級王者・竹原慎二は24勝(18KO)1敗でKO率72%。世界スーパーフェザー級王座を11度防衛した内山高志でも24勝(20KO)2敗1分けでKO率74%だ。

浜田に並ぶ15連続KOをマークした元世界フライ級王者・比嘉大吾は19勝(17KO)2敗1分けでKO率77%。いまだ無敗の前世界フライ級王者・中谷潤人も24勝(18KO)でKO率75%となっている。

あのタイソンでもKO率76%

軽量級とは思えない破格のハードパンチと抜群のスピードでKOの山を築く井上。驚異的なKO率の価値が高いのは、ほとんどが世界戦で記録していることだ。

どれだけパワーがあっても相手のレベルが上がるほどクリーンヒットするのは難しくなり、ノックアウトは減る傾向にある。井上はキャリア23戦のうち18戦が世界戦。世界トップレベルの相手を倒し続けるのは、勝つこと以上にファンを楽しませることにこだわる「モンスター」の真骨頂だろう。

井上のKO率を上回るボクサーは世界を見渡しても、そう多くない。現役王者ではWBAヘビー級王者ダニエル・デュボアのKO率90%、3団体統一ライトヘビー級王者アルツール・ベテルビエフのKO率100%、WBAライト級王者ガーボンタ・デービスのKO率93%など限られている。あのマイク・タイソンでも50勝(44KO)6敗2無効試合でKO率76%だ。

ちなみに井上と同じバンタム級で1970年代にKOの山を築いたカルロス・サラテは、66勝(63KO)4敗でKO率90%。そのサラテを破るなど17連続KO防衛の世界記録を作ったウイルフレド・ゴメスは44勝(42KO)3敗1分けでKO率88%だった。上には上がいるが、井上なら今後もKO街道を突き進んで、歴代の名王者を上回ることも十分に可能だろう。

dTVおよび、ひかりTVで独占配信される12月13日の4団体統一戦。今度はどんなド派手なKOシーンを見せてくれるのか楽しみだ。

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