ドネアとバトラーはともにプロベラムと契約
プロボクシングのWBA・WBC・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)がWBO王者ポール・バトラー(34=イギリス)と戦う4団体統一戦は12月13日に東京・有明アリーナで行われる。
井上がこれまで見せてきた無類の強さとは対照的に、バトラーは地味な印象は拭えず、34勝(15KO)2敗の戦績からも分かる通りパワーはないため、井上のKO勝ちを予想する声が圧倒的に多い。
実際、井上が負ける姿は想像しにくいが、逆にバトラー側から見た場合、どのように戦えば勝利に近付けるだろうか。
13日の試合を独占生配信するdTVで、ボクシングファンとして知られる千原ジュニアさんがMCを務める特別トーク番組が配信されている。その中でバトラーと同じ米プロモート会社「プロベラム」と契約しているノニト・ドネアがバトラーに送ったアドバイスが紹介されている。
「『距離を縮める』『その場にとどまる』ことが命取り」
ドネアは井上の23戦のキャリアの中で最も苦戦した相手と言って差し支えないだろう。2019年11月のワールドボクシングスーパーシリーズ(WBSS)決勝で対戦し、ドネアの強烈な左フックで井上が右まぶたをカット。11回にボディブローでダウンを奪って判定勝ちしたが、最後まで分からない激闘だった。
さらに2022年6月の再戦では井上が2回TKO勝ち。2度の対戦で井上の強さが骨身に染みているドネアだからこそ送った、極めて現実的なアドバイスだ。
バトラーは井上の焦りと打ち疲れを引き出す作戦?
「距離を縮める」ことも「その場にとどまる」ことも命取りになるとすれば、距離を取って動き回る以外にない。
バトラーは元々足を使うアウトボクサーのため、距離を取って戦うことは十分に予想できるが、ドネアのアドバイスを忠実に守るなら、一度も攻めてこないことになる。
バトラーを応援するイギリスのファンからすれば全く面白くない展開だろうが、最初から最後まで距離を取って判定勝ちを狙う可能性は十分にある。それが最もリスクの低い戦い方だからだ。
普通ならアウトボクサーでも時には前に出てポイントを奪いに来る場面が必ずある。強いパンチを当てて、あわよくばダウンを奪った方がジャッジに与える印象も良くなることは言うまでもない。
しかし、ドネアは井上との2戦目の2ラウンド、打って出ようとした一瞬に強烈なカウンターを浴びてダウンを喫した。同じ轍を踏まないために、バトラーは距離を取り続けることで、井上の焦りと打ち疲れを引き出す作戦に出る可能性は小さくない。
鍵は井上のボディブロー
鍵になるのは井上のボディブローだ。ボディに受けたダメージは確実に蓄積し、スタミナを奪う。
井上の場合はボディ一発で仕留めるパワーを持っているが、たとえ一発で倒せなくてもやがてバトラーの足を止めることにつながるだろう。
逆に言うと、バトラーは井上のボディブローをもらわない距離で戦いたいはず。身長165センチ、リーチ171センチの井上に対し、バトラーは身長168センチ、リーチ165センチと身体的な優位はなく、むしろリーチは井上より短い。
12ラウンド、アウトボックスするには速い左ジャブと最後まで動き回るスタミナが必要だ。井上をイライラさせるような展開に持ち込むのが理想だろう。
だが、それでもバトラーが井上から逃げ切れるとは思えない。dTVおよび、ひかりTVで独占配信される13日の4団体統一戦。日本初、世界でも9人目の偉業を決めるのは井上のボディブローか、あるいは左フックか。鳥肌の立つようなフィニッシュシーンが楽しみだ。
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